江戸川乱歩 「D坂の殺人事件」 創元推理文庫 乱歩傑作選 第2巻 その1

 創元推理文庫の乱歩傑作選第2巻の「D坂の殺人事件」です。この本には表題作を含めて10個の作品が収録されています。まずは、収録作品のタイトルです。
 ・二癈人
 ・D坂の殺人事件
 ・赤い部屋
 ・白昼夢
 ・毒草
 ・火星の運河
 ・お勢登場
 ・虫
 ・石榴
 ・防空壕
作品数が多いので、二回に分けてあらすじや感想などを書いていこうと思います。以前に読んだ角川ホラー文庫の「人間椅子」の収録作品と重複しているものは、以前の記事を再掲載させて頂きます。
 今回は、前半の5作品です。ネタバレ注意です。

<二癈人>※過去記事の再掲載です。
 年老いた二人の男、斎藤氏と井原氏は、温泉場で知り合います。井原氏は、過去の自分の罪を斎藤氏に話します。
 学生時代に井原氏は下宿生活を送っていました。ある日、朝起きた井原氏に、同じ下宿に住む友人の木村が、昨夜の井原氏の行動について話しますが、井原氏は全く覚えがありません。井原氏は、子供の頃に夢遊病の気があり、それが再発したようでした。それ以降、井原氏は眠っている間に下宿の他の部屋から物を取ってきたり、自分の物を他の部屋に置いてきたりを繰り返し、夢遊病が悪化していきます。
 そしてある日、井原氏が目を覚ますと、金銭及び債権等が入った見知らぬ荷物が部屋の中にありました。そしてその日には、下宿の主人が何者かに殺され、金銭及び債権等が奪われる事件が発生していました。殺害現場で発見された遺留品は井原氏の持ち物でした。井原氏は逮捕されますが、夢遊病で心神喪失状態での犯行とされ、罪は問われずに釈放されました。
 井原氏の話を聞いた斉藤氏は、下宿の主人を殺した犯人が本当に井原氏だったのかと疑問を呈します。斉藤氏は、井原氏が夢遊病で下宿内をさまよっている姿を見たのは友人の木村だけであり、井原氏は木村によって犯人に仕立て上げられたのではないかと指摘します。その後、斉藤氏は去っていきます。
 去っていく斉藤氏を見送った井原氏は、斉藤氏が木村であったことに気付きます。しかし井原氏には木村を恨む気持ちは沸いてきませんでした。

 物語の最初の方に、井原氏が温泉場で出会った斉藤氏を以前に会ったことがある気がするというような記述があり、物語のオチが想像できてしまいました。読者に対してフェアな記述ではありますが、ヒント出し過ぎな気がします。

<D坂の殺人事件>
 私はD坂がある白梅軒という喫茶店に入ってコーヒーを飲みながら、向かいの古本屋を眺めていました。私は、以前から古本屋の美人な女房が気になっており、店番をしている姿を眺めよう考えていましたが、女房は一向に姿を現しません。30分くらいすると、喫茶店に友人の明智小五郎が入って来て私の隣に座りました。2人はそれから話をしつつ、古本屋を眺めていました。しかし古本屋に店番は姿を現さず、店番のいない古本屋では万引きしていく客が後を絶ちません。不審に思った2人は、喫茶店を出て古本屋へ入り、更に店から奥の部屋へ入って行きます。奥の部屋には、首を締められて殺された古本屋の女房が倒れていました。
 警察が調査を開始しますが、古本屋の主人は別の場所で夜店を開いていた確かなアリバイがあり、古本屋に出入りした人物は見当たりません。殺された女房の身体には、虐待されたような傷跡がたくさんありました。
 後日、明智の家を訪ねた私は、この殺人事件に関する自分の推理を披露します。それは、明智が犯人だというものでした。明智は私の推理を否定し、犯人は古本屋の二つ隣の蕎麦屋の主人だと話します。蕎麦屋の主人と古本屋の女房は不倫しており、更にSMプレイが行き過ぎて女房を殺してしまったと、明智は説明します。明智が私に差し出した新聞には、蕎麦屋の主人が自首した事が小さく記載されていました。

 真相は、何じゃそら!という作品でした。「私」の推理については推理小説としてはありな内容に思えましたが、明智の反証では証人の発言が全部が思い込みの勘違いというもので、犯人も唐突に登場する蕎麦屋の主人という強引もものでした。アンフェアな読後感でした。
 この作品が、明智小五郎の初登場作品だそうです。何度か映画化もされているようで、案外人気の作品なのかもしれません。

<赤い部屋>
 真っ赤な装飾の部屋に7人の男が集まっています。その中の1人であるT氏が、自分の犯した殺人について語り始めます。
 ある時にT氏は、人を跳ねてしまった自動車の運転手に病院を尋ねられ、うっかりと藪医者の病院を教えてしまいます。その結果、跳ねられた人は死んでしまいますが、親切に病院を教えただけのT氏は何ら罪を咎められる事はありません。この出来事をキッカケにT氏は、自分は直線的に手を下す事なく、人を死ぬかもしれない状況へと導く事を何度も行い、遂に99人を殺しました。
 T氏が話終えると、給仕女が赤い部屋に入って来て飲み物を配ります。T氏は突然にピストルを取り出すと給仕女に発砲します。しかし給仕女は無傷で、T氏はピストルがおもちゃだと話します。給仕女は、ピストルをT氏に向けて引き金を引きます。今度は、T氏の胸が血に染まり、T氏は倒れます。
 周りの6人は、T氏が100人目の殺人に自分を選んだに違いないと考えます。しかし、T氏は笑いながら立ち上がり、全てが作り話だったと話します。

 どんでん返しのどんでん返しという物語でした。まあ、面白かったです。ただ、T氏が最後に本当に死んでいた方がインパクトのある物語になったような気がしなくもないですが。

<白昼夢>
 大通りで一人の男が熱く語っており、周りに集まった人々は大笑いしていました。私は、近寄って話を聞いてみます。男は、浮気した妻を殺して屍蝋化したものを、自分の店先に飾っていると話していました。周りの人々は、誰も男の話を信じていません。ふと私が向かい側の薬屋に目を向けると、店先には女性の人体模型が飾られています。近づくと、人体模型の表面には産毛が生えていました。

 わずかに7ページのショートホラーという印象の短編でした。特別な驚きはありませんが、周りの人々が大笑いしているという状況が恐怖感を増していました。

<毒草>
 友人と散歩をしていた私は、小川の岸に生えた植物を見つけ、この植物が昔は堕胎薬として用いられていたと話します。私がふと振り向くと、一人の妊婦が立っていました。この妊婦は郵便配達夫の妻で、子だくさんで貧乏な家庭でした。私は、家に帰った後、気になって小川まで戻ります。例の植物は、折り取られていました。
 その後、郵便配達夫の妻は流産します。更に町内では、流産が相次ぎます。私が再び小川まで行ってみると、たくさん生えていた植物は、どれも折り取られていました。

 これも、わずかに8ページの短編でした。現代の視点でみれば、怖いというよりは、不幸な物語に思えます。




太田垣康男 「機動戦士ガンダムサンダーボルト」 第10巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第10巻は、2017年8月に発売されています。
 前回の第9巻では、水上都市へ到着した連邦軍のスパルタンは、多数のモビルスーツ及び兵士を投入して都市の制圧を開始し、サイコザクの手掛りを得るために南洋同盟の兵士達を次々と捕らえていきました。水上都市にいた何人かの傷痍軍人達は、レヴァン・フウ僧正の声を聞いて集まり、潜水艇で水上都市からの脱出を敢行します。潜水艇には、ダリルの仲間のフィッシャーも乗り込んでいました。潜水艇は、アトラスガンダムを含む連邦軍の追手を振り切って、レヴァン僧正が待つ南洋同盟の寺院へたどり着きます。水上都市に取り残されたダリル達は、南洋同盟の一員となっていたクローディアの身柄を確保し、ジオン軍の潜水艦に救出されます。しかし、この潜水艦の艦長は、南洋同盟のレヴァ
ン僧正の信者でした。
 第10巻の物語はこの続きからです。そろそろサイコザクの復活が見たいところですが…。
 以下、「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第10巻の物語です。ネタバレ注意です。

 水上都市を離れたスパルタンは、補給と修理の為に東南アジアの連邦軍基地であるペカンバル基地へ向かいます。スパルタンには捕らえた南洋同盟の兵士達が詰め込まれ、尋問が行われます。イオは、アトラスガンダムにもっと武器を搭載しろと、コーネリアスを含むメカニック達に無理難題を言って暴れます。その様子を見たビアンカは、アトラスガンダムで全部の武器を運ぼうと考えるから手詰まりになるとコーネリアスにアドバイスします。
 ジオン軍の潜水艦に救われたダリル達は、ジオン軍の海底基地ドロスを目指しています。ドロス基地では、幼児退行したカーラ博士がダリルの帰りを待ちわびていました。ダリルは、潜水艦の艦長のカウフマン少佐に、捕虜のクローディアとの面会の許可を貰います。
 スパルタンでは、ビアンカの発案により、アトラスガンダムの武器を3機の陸戦ガンダムが運ぶという編成を採用し、訓練を行っていました。三機の陸戦ガンダムはイオと仲の悪い三馬鹿トリオのマーカス、オルフェ、デントが担当です。これにチームリーダーのビアンカを含めて5人の新チームが結成されます。訓練と称したイオと三馬鹿ととの対決に、スパルタンの乗組員達は盛り上がります。
 ダリルはクローディアと面会します。レヴァン僧正のニュータイプ能力でお互いの過去を見たダリル及びクローディアは理解し合い、キスをします。その様子を監視カメラでカウフマン少佐が見ていました。
 水上都市でスパルタンの監視カメラが撮影した画像に、クローディアを抱えたダリルの姿が映っていた事が判明します。モニカ参謀とバイク艦長にこの画像を見せられたらイオは、暴れ回り、独房に入れられます。
 ダリル達の乗る潜水艦は、ドロス基地に到着します。クローディアは連行されます。ダリルの仲間のビリー、ペドロ及びジャニスは、ダリルの様子がおかしい事を心配します。ダリルの仲間のセバスチャンは、カウフマン少佐に仲間となるよう勧誘されます。ダリルは、カーラ博士と再会し、カーラ博士を守る事を誓います。
 スパルタンはペカンバル基地に到着し、乗組員達は休暇を与えられて街へ出て行きます。独房に残されたイオに、ビアンカが会いに来ます。イオは、クローディアとのことをビアンカに話し、吹っ切れます。2人の様子を、影から三馬鹿トリオが見ていました。
 ドロス基地に潜むレヴァン僧正の支持者達は、クローディアを救い出します。ダリルは、カーラ博士を連れ出します。カウフマン少佐は、タール山という火山にサイコザクの工場があることをクローディアから聞き出したと報告し、ヨハン中佐のゾックが偵察に出る作戦を進言し、認められます。その頃、レヴァン僧正の支持者達は、既にゾックを制圧していました。カーラ博士を連れたダリルは、ゾックへ向かい、クローディアと合流します。
 スパルタンでは、捕虜の尋問の結果、南洋同盟の基地がタール火山にあるという情報を得ます。その頃、イオの独房にはコーネリアスが様子を見に来ていました。2人が話していると、独房が解放され、イオ及びビアンカ達のチームであるトラスト部隊に召集がかかります。イオは、嬉々として独房を出て行きます。残されたコーネリアスは、「憎しみも殺し合いも・・・僕らはいつまで続けりゃいいんだ?」と呟きます。

 以上が「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第10巻の物語です。今回は、連邦側とジオン側とが1話毎に切り替わる構成でした。戦闘シーンはなく、次回へのつなぎ的な内容でした。ただ、いよいよ物語が佳境へと向かっている雰囲気が感じられました。次回への期待は膨らみます。巻末の次回予告には、サイコザクらしき姿が描かれていました。次回は、タール火山での両軍の大激突が見れると思われます。楽しみですね。

 


太田垣康男 「機動戦士ガンダム サンダーボルト外伝」 第2巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」の第2巻は、2017年5月に発売されました。ボビージャパンのモデラーが制作したプラモデルをメカシーンに使用したフルカラー漫画の第2段です。ガンダム好き、サンダーボルト好き、プラモデル好きな私にはたまらない作品です。「ガンダム好き、サンダーボルト好き、プラモデル好き」というと特殊な条件に見えますが、案外当てはまる人は多いのではないかと信じています。
 それでは、「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」第2巻に収録された各話の物語です。ネタバレ注意です。

<第7話 盾>
 イオ・フレミング少尉が乗るフルアーマー・ガンダムと共に戦った多数のジムやボール達。これらの中の一機のジムのパイロットであるアリシアの物語です。
 アリシアは、月への修学旅行中に故郷であるサイド4ムーアの壊滅を知りました。その後、連邦軍に入ってモビルスーツのパイロットになったアリシアは、恋人のカールと共にイオを守るためのジム部隊に編入されます。イオと共に出撃したパイロット達は、イオを守る盾になろうと奮戦し、次々と撃破されていきます。イオは、仲間のジムを盾として最大限に利用して戦い続けます。そしてアリシアの目の前で、カールがイオの盾となって散って行きます。
 アリシアは生き残り、スパルタンに配属されます。スパルタン内でアリシアはイオとすれ違いますが、イオはアリシアの存在を気にもとめていませんでした。

 その他大勢、ヤラレ役のジムと、そのパイロットとに焦点を当てた物語でした。ほとんど特攻隊的な存在のジム部隊の悲哀と、イオの悪者っ振りが強調された物語でした。

<第8話 サバイバー>
 ソロモンにてジオン軍は連邦軍に敗北し、ジオン軍の艦隊はソロモンから撤退を開始します。その中の一隻のムサイでは、出来るだけ鑑の重量を減らすため、2機の旧ザクが不要な荷物を鑑外へ投棄する作業を行っています。2機のうち新入りが操縦する旧ザクは、上司であるドミトリー・ウスチノフ軍曹の命令に従って、作業を行っていますが、投棄する荷物の中に3発の残弾があるモビルスーツ用のライフル銃を発見します。ドミトリー軍曹がライフル銃も投棄しろと命令したとき、連邦軍の追っ手の攻撃がムサイに命中し、2機の旧ザクは鑑外に放り出されます。2機の旧ザクは、ワイヤーでムサイと繋がれており、全速力で逃げるムサいに引かれた状態で、ムサイの後方に漂う事になります。しかし、追っ
手の4機のジムがムサイに対する攻撃を開始し、ムサイも反撃を開始したため、2機の旧ザクは両方の攻撃にさらされてしまいます。新入りの旧ザクは、手に持っていたライフル銃を使い、残弾3発で4機のジムを撃破します。これを見たムサイの艦長は、旧ザクの新入りを、デッキ要員からスナイパー部隊へ編入する事を決めます。この新入りが、ダリル・ローレンツでした。

 ダリルがスナイパーとして目覚める、正に始まりの物語でした。残弾3発で4機撃破。まるでシティ・ハンターです。ヒーローですね。第7話でのイオの悪人っ振りとの描かれ方の格差がすごいです。やはり主人公はダリルなのでしょうね。
 面白かったの一言です。

<第9話~第11話 死ぬには良い日だ>
 ムーア同胞団とリビング・デッド師団の両軍の艦隊が全滅したサンダーボルト宙域で、フルアーマー・ガンダムとサイコ・ザクとの戦闘が続いています。ジオン軍のセイレーン機動艦隊から偵察部隊としてサンダーボルト宙域へやってきたケイトのザク・フリッパーとジャニスのザク強行偵察型は、2機の戦闘データを艦隊へ送信しようとしますが、宙域を漂う残骸が多過ぎてレーザー通信が艦隊まで届きません。ケイトは、残骸を破壊して通信路を確保することを提案しますが、敵に居場所を発見される可能性があります。ケイトはジャニスに銃を向けて、障害物の破壊とレーザー通信を強行させます。そしてレーザーは艦隊へ届き、データは送信完了します。
 しかし、障害物の破壊で敵に発見され、ジム及びボールの部隊が向かって来ます。ケイトは、障害物で武器を使い尽くしたジャニスを逃がし、自分は敵へ特攻しようとします。そのとき、ガンダムとザクの戦いで破壊された廃コロニーの破片が降り注ぎます。ジム及びボールの部隊もこの破片でダメージを受けますが、ケイト及びジャニスを追い続けます。
 逃げる2人は、サイコ・ザクが残していったプロペラントタンクを発見します。燃料が残されていたタンクをザク強行偵察型に接続した2人は、ブースターを点火してサンダーボルト宙域を脱出します。

 物語としては、面白かったですが、3話分も使うほどの内容ではないように思われました。ただ、登場するモビルスーツが、ザクフリッパーとザク強行偵察型という、MSV好きな私としては感涙ものでした。この2機は、いつかプラモデルで作りたいと思う機体です。サンダーボルト版のデザインになったプロの作例は、やはり素晴らしいですね。

<第12話 さよなら月曜日>
 ジオンのとあるコロニーでの物語です。父親テッドと息子ウィリーは、母親キャサリンが他の男と出て行ったため、父子の2人で暮らしています。テッドは、モビルスーツの製造工場で働いていましたが、最近になって召集令状が届き、来週の月曜日から兵役に就かなければなりません。テッドは、ウィリーをキャサリンの元に預ける事にします。テッドは、最後の週末をウィリーと2人で過ごし、月曜日にウィリーをキャサリンに預けて兵役に就きます。

 絵柄がいつもと違って、まるでスヌーピーとチャーリー・ブラウンのような絵柄になっている作品でした。モビルスーツも工場内で少し登場するだけで、戦闘シーンは全くありません。パッと見は、サンダーボルトにも、ガンダム作品にも見えないです。しかし、ポップな絵柄と裏腹に、内容は戦争に赴く一般人の悲哀を描いており、ものすごくガンダム的な作品でした。とても良かったです。その後の物語を、ハッピーエンドで読みたいですね。

 以上が「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」第2巻に収録された短編の物語です。通常の単行本より100円ほど高いのですが、フルカラーでこの内容であればむしろ安いのではないかと思います。ぜひ第3巻も出して欲しいですね。




後閑哲也 「PICマイコンではじめる 作って遊べるロボット工作」

 後閑哲也さんの「PICマイコンではじめる 作って遊べるロボット工作」は、2003年8月に発売された本です。
 以前に、同じく後閑哲也さんの「PICマイコン+タミヤ工作セットでできるロボット改造工作マニュアル1」を図書館で発見し、タミヤのトリケラトプスのリモコン化に挑戦しようかと考えていた矢先、図書館でこの「PICマイコンではじめる 作って遊べるロボット工作」を発見しました。パラパラと眺めてみると、こちらの工作の方が断然面白そうでした。
 トリケラトプスは単にリモコン化するだけですが、こちらはセンサで黒線を辿る、いわゆるライントレースするロボットです。あっさりトリケラトプスは止めて、ライントレースロボの作成に変更する事にしました。
 ただし、この本「PICマイコンではじめる 作って遊べるロボット工作」は、プログラミングがアセンブラで紹介されている点で、やや敷居が高いです。トリケラトプスの方はC言語でした。まあこの点は、アセンブラの勉強にもなりますし、同じプログラムをC言語で作成することにも挑戦できるので、問題ないかなと考えてます。
 それよりもこの本の敷居を高めているのは、プリント基板を自作しよう!となっている点です。現像液やエッチング液などを使って現像する手順が説明されているのですが・・・。いやいや、そこまでの本気の制作ではなく、趣味の工作で十分です。この部分は、自力で汎用の基板に回路制作するしかなさそうです。
 以下、参考までに、後閑哲也さんの「PICマイコンではじめる 作って遊べるロボット工作」の各章を紹介します。

<第1章 ロボット工作のいろは>
 ロボット製作の手順や、必要な道具などを紹介しています。

<第2章 電子回路の基礎知識>
 抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの特性を簡単に説明しています。

<第3章 センサの使い方>
 光センサの特性や使い方などを簡単に説明しています。

<第4章 モータの基礎知識>
 モータの特性、制御方法、ICを使ったモータ制御回路などを説明しています。

<第5章 ライントレーサの設計>
 ロボットの機械的な部分について、部品の選定などを行っています。

<第6章 コントローラ部の設計>
 ロボットの回路部分について、PICマイコンを使った具体的な回路を説明しています。この本の最も重要な部分だと思います。

<第7章 いよいよ組み立て>
 回路基板の自作方法と、自作した回路基板へ部品を実装したものを紹介しています。

<第8章 プログラムの製作>
 アセンブラによるプログラムの作り方と、実際のプログラムを紹介しています。この章も重要です。

<第9章 チューニング>
 完成したロボットを動かしてみようというだけで、あまり内容はありません。

<付録>
 MPLABというツールを使ってPICマイコンのプログラムを開発する方法を紹介しています。


江戸川乱歩 「孤島の鬼」 創元推理文庫 乱歩傑作選 第1巻

 江戸川乱歩さんの「孤島の鬼」は、1929年~1930年に雑誌で連載された長編作品です。ちなみに、探偵役として明智小五郎が登場しない作品です。
 以前に創元推理文庫の「日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集」を読みましたが、これとは別に創元推理文庫からは江戸川乱歩さんの作品が乱歩傑作選として数多く出版されています。このシリーズは、「日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集」と重複しないように作品が選ばれているようです。また、表紙の絵がクラシックないい雰囲気だったというのもあり、第1巻となる「孤島の鬼」を購入して読んでみました。江戸川乱歩さんの「孤島の鬼」は、あまり聞いたことがない作品でしたが、シリーズの第1巻に選ばれるくらいだから面白いに違いない、と期待して読み始めました。
 以下、「孤島の鬼」の物語です。ネタバレ注意です。

 蓑浦金之助は、会社の同僚の木崎初代と恋に落ちます。初代は、子供の頃に本当の親に捨てられて現在の母に育てられ、母娘の2人で生活しています。初代は、捨てられたときに所持していた家系図を大切にいつも持ち歩いています。蓑浦が初代に指輪をプレゼントしたお返しに、初代は家系図を蓑浦にプレゼントします。
 初代に求婚する金持ちの男が現れます。この男、諸戸道雄は、蓑浦の友人であり、女嫌いのゲイで、蓑浦を好いている人物でした。初代の母は金持ちの諸戸と初代を結婚させようとしますが、初代は断ります。
 ある日、初代は自宅の周りを怪しい老人が探っているのに三度続けて出くわします。そしてしばらく後に、初代は自宅で胸を刺されて死亡します。このときに初代の家は、人が出入りできる箇所の全てに鍵が掛けられていて、外部からの侵入が不可能な密室状態であり、家の中には初代及び母親のみが寝ていました。母親は、初代が殺されていることに気付かずに眠っていました。
 初代が殺害されたことを知った蓑浦は、犯人に復讐する事を決心し、犯人を見つけるために、知人の素人探偵の深山木幸吉に調査を依頼します。蓑浦が深山木と共に初代の家を訪れると、諸戸に出会います。深山木は、密室に関して何か思いついたようですが、七宝の花瓶が関係しているとほのめかすのみです。その後、深山木は、調査のために姿を消し、一週間後に戻ってきます。
 深山木に呼び出された蓑浦が深山木の家を訪れると、深山木は自分宛てに届いた脅迫状を見せます。脅迫状には、深山木が持っている物を渡さなければ、この日の正午に深山木を殺すという内容が書かれています。深山木は、脅迫状に書かれた物を蓑浦に郵送したと話し、正午より少し前に近くの海岸へ向かいます。海岸は海水浴客が大勢おり、深山木は子供達と砂浜で遊び始め、蓑浦はこれを眺めています。気付くと正午を過ぎており、子供達に砂に埋められていた深山木は、いつの間にかむねを刃物で刺されて死んでいました。周りには大勢の海水浴客がいましたが、深山木が刺されるのを見た者はいませんでした。
 その後、蓑浦の元に深山木からの郵便物が届きます。荷物は、乃木大将の石膏像であり、蓑浦はこの石膏像が何なのか分かりません。
 蓑浦は、深山木が殺された海岸で諸戸を見かけた事から、諸戸が犯人ではないかと考え、諸戸を訪ねます。諸戸は、一連の事件を調べていたと蓑浦に話し、密室での初代殺しの謎と、衆人環視下での深山木殺しの謎とを解明して見せます。諸戸は、殺人の実行犯は子供であり、この子供を操る黒幕がいると話します。諸戸は、実行犯の子供を見つけて自分の家に呼び出しており、この子供に黒幕を聞き出そうとしますが、潜んでいた何者かに子供を撃ち殺されてしまいます。
 諸戸及び蓑浦は、深山木から送られた乃木大将の石膏像を割ります。中からは、蓑浦が深山木に預けていた初代の家系図と、一冊の日記帳が出てきました。家系図を調べてみると、何かの暗号らしき文章が見つかります。事件の黒幕は、この暗号文を手に入れようとしていたようです。日記帳は、どこかに幽閉された女性が書いたものでした。この女性「秀ちゃん」は、体の一部が双子の男性「吉ちゃん」と結合した状態で産まれてきた障害者のようでした。この日記帳を読んだ諸戸は、黒幕が自分の父親「丈五郎」であることを悟ります。蓑浦は、家系図及び日記帳を隠れ家に隠しておきますが、次に隠れ家を訪れたときにはなくなっていました。
 諸戸及び蓑浦は、諸戸の実家へ行って、黒幕である丈五郎と直線対決する事を決意します。諸戸の実家は、ほとんど人の住んでいない孤島にありました。
 船に乗って孤島へと辿り着いた諸戸及び蓑浦は、諸戸の実家を訪れます。実家に滞在した数日間、諸戸は丈五郎と2人きりで話しをします。蓑浦はその間に秀ちゃん及び吉ちゃんが閉じ込められた蔵を発見し、秀ちゃんを好きになってしまいます。その後、諸戸は丈五郎にこの蔵の中に閉じ込められ、蓑浦は一人で帰るよう言い渡されます。
 蓑浦は、この孤島に住む老人「徳さん」に協力を願い、徳さんの息子が蓑浦の影武者として島から出ることになります。しかし、蓑浦の影武者を乗せて徳さんが船を出すと、丈五郎が崖の上から岩を落とし、この船を沈めてしまいます。
 徳さんの息子に変装して島に潜んだ蓑浦は、蔵の中の諸戸と連絡を取り合って反抗の機会をうかがいます。そして丈五郎の護衛達が島を出たとき、諸戸及び蓑浦は丈五郎を取り押さえることに成功します。
 諸戸は家系図の暗号を解読し、古井戸の中に財宝が隠された場所へ通じる通路を発見します。諸戸及び蓑浦が通路の奥へと進むと、そこは幾重にも枝分かれした洞窟でした。諸戸及び蓑浦は、入口に縄を結び付けて洞窟の奥へと進みますが、途中で何者かに縄を切られ、道に迷ってしまいます。諸戸及び蓑浦は、洞窟内をさまよい歩き、途中で徳さんと再会し、遂には財宝が隠された場所に至ります。しかしそこには、逃げ出した丈五郎が先にたどり着いており、財宝を発見した喜びでおかしくなっていました。縄を切断したのは丈五郎のようでした。
 その後、独自に殺人事件を捜査していた警察が島に上陸し、おかしくなった丈五郎は逮捕されます。秀ちゃん及び吉ちゃんの身体が結合しているのは生まれつきではなく、丈五郎が外科的に結合したものであることがわかり、二人は手術で分離されます。また初代はこの島の出身であり、秀ちゃんは初代の生き別れの妹でした。その後、蓑浦は秀ちゃんと結婚し、二人は幸せに暮らしました。

 以上が「孤島の鬼」の物語です。密室殺人などの殺人事件を解決する推理小説の部分は最初から1/3程度で終わり、それ以降は犯人との対決や宝探しが描かれる冒険小説でした。これには好き嫌いあると思いますが、前半の推理部分よりも、後半の冒険部分の方が面白かったです。
 この作品には、身体的に欠陥のある人々が多数登場します。作中では、身体的に欠陥のある人々というような遠まわしな表現ではなく、もっと直線的な表現が用いられています。現在では差別的な表現と見なされそうな表現が多発しますが、差別的なブログと判断されないよう、上記のあらすじではこの辺りの部分を省略しています。現在ではこの内容で作品を発表するのは難しいのではないかと思われますが、当時は認められていたのでしょう。このような人々を登場させなくても物語を作ることは出来たのではないかと思いますが、おどろおどろしい雰囲気を出すために登場させたのでしょうね。
 創元推理文庫の「孤島の鬼」は、雑誌連載時の挿絵が完全収録された完全版と言うべきものです。おどろおどろしい挿絵が物語の恐怖感を高めてくれます。