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東野圭吾「予知夢」 第一章「夢想る」

 小説版ではガリレオシリーズ第2弾となる「予知夢」です。2000年6月に単行本が出版され、2003年8月に文庫化されています。
 タイトルの「夢想る」は、「ゆめみる」と読みます。

 子供のころから「森崎礼美」という女性と出会うことを夢見ていた男:坂木信彦は、大人になって森崎礼美という生の女性を発見し、彼女に合うため夜中に屋敷に侵入します。しかし坂木は、屋敷への侵入の途中で森崎礼美の母親:森崎由美子に発見され、猟銃で撃たれます。銃弾は坂木には当たらず、坂木は車で逃走するのですが、その途中でひき逃げ事故を起こして警察に捕まります。坂木は、森崎礼美から会いに来るよう手紙をもらったと主張しますが…、という物語です。坂木が森崎礼美に出会ったのは偶然か必然か、これがこの物語の問題点となります。

 「夢想る」を読み終えた感想ですが、なんだかガリレオシリーズっぽくなく、普通の推理小説っぽかったです。物語の中に、科学的な要素が全くありません。「探偵ガリレオ」の5つの物語と比較して、スケールダウンした感があります。
 小説「予知夢」には、「夢想る」、「霊視る」、「騒霊ぐ」、「絞殺る」及び「予知る」の5つの物語が収められています。今回の「予知夢」は再読なのですが、大まかなストーリーを思い出せるのは「騒霊ぐ」の1つだけで、他の4つは全く内容を覚えていません。「探偵ガリレオ」の5つの物語は、どれもある程度の内容を覚えていたのですが…。初読時の印象が薄かったのかもしれません。
 「探偵ガリレオ」及び「予知夢」は、出版当初はそれほど有名な作品であったわけではなく、「容疑者Xの献身」のヒットにより注目された作品であったと記憶しています。このため「予知夢」の段階では、まだ作者が試行錯誤を繰り返している段階であり、「夢想る」は科学要素を減らして推理小説らしい作品としたのではないかと推測します。

 さて「夢想る」ですが、ガリレオ先生により解明された真相は複雑です。
 母親の由美子が不倫→不倫相手:桜井努の子供:真子に人形をプレゼント→真子が人形に森崎レミと名付ける→由美子が生まれた子供に礼美と名付ける、という森崎礼美側の流れがあります。これとは別に、坂木側の流れがあります。
 幼いころに坂木は真子と友達同士→真子が死亡→坂木が人形を譲り受ける→人形が捨てられる→坂木は人形の名前だけを思い出し、運命の相手と思い込む→大人になった坂木が森崎礼美を見つける。
 こうして坂木と森崎礼美とが偶然か必然か出会うことになります。その後の流れは、以下の通りです。
 坂木が森崎礼美につきまとう→由美子が真相発覚を恐れて坂木の殺害を決意→由美子が手紙を送って坂木をおびき寄せる→坂木が森崎家へ侵入→殺害失敗

 このように真相はかなり複雑です。「坂木が子供の頃に適当に思いついた名前の相手に大人になってから偶然出会う」という推理は、物語の初めの方で確率が低くて起こり得ないと否定されています。しかしながら、真相の複雑さを考えると、この真相ような出来事が起こる可能性は、偶然出会うより確率が低そうに思えてしまいます。「森崎礼美」ってそこまで特殊な名前ではなさそうに思うのですが、いかがでしょう?

 ちなみに「森崎礼美」をネットで検索すると、ほとんどがこの小説の「森崎礼美」か、又はドラマ版ガリレオの「森崎礼美」に関する記述ばかりがヒットします。しかしながら、いくつか全く別人の「森崎礼美」にもヒットします。芸名又はペンネーム等である可能性もありますが、全く存在しない名前ではなさそうです。

 余談ですが、由美子が坂木をおびき寄せるために作った手紙がワープロで作成されており、このワープロのインクリボンが証拠となってしまいます。ちょっとお粗末な結末です。それにしても、インクリボン…懐かしいですね。今のインクジェットやレーザーのプリンタなら証拠は残らなかったのかな。

 小説「予知夢」の第一章「夢想る」は、少々期待外れでした。第二章以降にガリレオらしさが戻ってくることを期待して、続きを読みたいと思います。


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