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弐瓶勉 「人形の国」 第7巻

 弐瓶勉さんの「人形の国」第7巻は、2020年11月に発売されました。
 前巻では、皇帝スオウニチコと我らがエスローとの直接対決が実現しました。エスローはスオウニチコを追い詰めますが、エスローがAMB弾を使わずにスオウニチコを攻撃したため、スオウニチコに逃げられてしまいます。この対決でスオウニチコはエスローの能力が未来改変である事を確信し、タイターニアはスオウニチコの能力が未来予知である事を知りました。お互いに能力が知られた事で、これからの戦いは駆け引きが重要になりそうですね。
 それでは以下、「人形の国」第7巻のあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

 北合成スラブ地方のある村。村の守り神だったマヒヌテ様が村人を殺す事件が続いていました。ハニツホカ爺は、マヒヌテ様と話しをつけるために、夜中に1人で村を出ます。マヒヌテ様の住処にやってきたハニツホカ爺は、準超構造体の槍でマヒヌテ様を倒そうとしますが失敗します。マヒヌテ様はハニツホカ爺に反撃しようとした瞬間、別の攻撃を受けて頭部を破壊され、死亡します。マヒヌテ様を倒したのは、偶然に通りかかったエスローでした。マヒヌテ様はハニツホカ爺の先祖であり、転化に失敗した不完全な正規人形でした。
 エスローは、マヒヌテ様を倒して得たエナをケーシャ及びワサブに分けようとします。しかしケーシャは、自分のエナ容量が上限に達し、これ以上はエスを得る事で成長する事ができなくなっていました。エスロー達は北合成スラブ地方を出て、リドベア帝国の中心地へ向かいます。
 リドベア帝国の中心には、深さ1万キロの四角い穴があり、地表付近に帝国の全人口の約半数が居住しています。リドベア帝国は転生者が遂に1万体を超え、全転生者を集めて皇帝スオウニチコが演説を行いました。
 帝国の科学者であるタシツマに、軍務局から連絡が入ります。軍務局は、タシツマが人工的に生み出した転生者アジェイトを処分する事を命じます。
 皇帝スオウニチコは、転生者処刑隊隊長ヌーキー准将を呼び出し、反逆者エスロー及びその仲間達の抹殺を命じます。また皇帝スオウニチコは、聖遺物捜索旅団のジェイト准将に、AMBの回収を命じます。ヌーキーはジェイトに協力して任務を終わらせようと持ち掛けますが、ジェイトは断ります。ジェイトは、トオス及びリナイと、処分を撤回させたアジェイトと共に、飛行艇でAMB回収任務に出ます。ヌーキーは、ズドルイ及びクドバの2人の転生者をエスロー抹殺任務に送り出します。
 エスロー達は、タイターニアが作り出した偽装チップを使って、リドベア帝国内へ入る事に成功します。ジェイト及びアジェイトは、大量の自動機械コフを操って情報収集を行います。
 エスロー達は、帝国内のお店で食事をしていると、相席を求められます。相席を求めた相手は、ジェイト、トオス及びリナイの3人でした。3人は自身のエナを置いてきており、タイターニアも接近に気づきませんでした。ジェイトは、戦闘ではなく話し合いを求め、エスローにAMBを渡せば手打ちにすると提案します。エスローはこれを断り、交渉は決裂します。ジェイト達が立ち去ろうとしたとき、何者かの攻撃が辺り一体を破壊します。クドバの能力による攻撃でした。とっさにジェイトを庇ったトオスが負傷します。エスロー達の前に現れたズドルイは、クドバと共にエスロー達に襲い掛かります。ズドルイは、エスローのEBTGが放つ弾を避ける程の高速移動から刀による突き攻撃を放ちます。クドバは、エナをゲル状に変化させる事で触手のように操って攻撃してきます。エスロー及びタイターニアがズドルイを、ケーシャ及びワサブがクドバを相手します。エスローは、「何でも撃てる装置」EBTGでズドルイの刀を受け止め、刀を射出する事でズドルイを倒します。その後、エスロー及びケーシャの連係攻撃でクドバを倒します。飛行能力しか持たないワサブは全く戦闘の役には立ちませんでしたが、この戦闘に巻き込まれた事で小さな尻尾が生えるという変化がありました。
 街で騒ぎを起こしてしまった事で、エスロー達は再び地下に身を隠しながら移動していました。ジェイト達は、飛行艇に戻り、負傷したトオスの治療を行っていました。そこへ、近くの町が何者かの襲撃を受けたとの通報が入り、ジェイトはこの町へ飛行艇を向けます。
 この通報があった町の近くにエスロー達は来ていました。町からは煙が上がっており、様子が変でしたが、エスローは帝国の問題には関知せずに立ち去ろうとします。しかしケーシャが町の外に放り出された人がこのままでは死んでしまうと主張し、エスローは助けに向かう事にします。テントを張って人々を助けた後、タイターニアはこの村を襲った何かを感知します。現れたのは、過去の戦争で使われた対正規人形兵器ムグホシでした。ムグホシは、巨大な獣のような姿の自動機械で、誰かが発掘して帝国を襲うよう命令したものと推測されました。ムグホシは、エスロー、ケーシャ及びワサブの3人がかりでも倒す事はできませんでしたが、活動時間が短く、しばらく暴れた後、ヘイグス粒子が切れて、小さなぬいぐるみのような姿に変わります。ムグホシの腹部には、切り取られた指が突き刺さっており、これがムグホシを操っていたようです。指を抜き取るとムグホシはケーシャになつき、ケーシャはムグホシをペットとして連れて行く事にします。その後、この街にやってきたジェイト達は、人々から話を聞き、人々を助けたのはエスロー達で、自動機械を操っていたのは真地底教会だと推測します。
 北合成スラブ地方のある遺跡を、真地底教会の4人の再生者が調査していました。再生者イヘマは、遺跡の中で祝福の甲冑という大きな正遺物を発見します。真地底教会に戻った4人は、正遺物の発見をカジワンに報告しますが、カジワンは人形病患者を連れてくる事を命じており、正遺物の発見を成果とは認めません。カジワンはイヘマの右腕をへし折り、カジワンが地下で発見した四本脚で背中に羽のある女性の姿をした謎の存在から指をへし折り、この指をイヘマの右腕に突き刺します。その後、イヘマは壁に吊されます。周りには同じように指を突き刺された再生者達が吊され、指は再生者を苗床として成長して蛹のようなものを作っていました。その後、イヘマに刺された指も成長して蛹となり、イヘマは用済みとなります。再生者ジナタは、干からびたイヘマの身体を、祝福の甲冑と同化させます。祝福の甲冑は動き出し、ジナタと共に真地底教会へ戻ります。
 エスロー達は一般人に変装して、列車で旅を続けていました。
 リドベア最北端の都市ルトーメロ。数日前から人形病の患者が急増し、住人の半数以上が発症していました。人形病の患者達は同じ方向を向いており、その方向から巨大な人型の存在、祝福の甲冑が現れます。

 以上が、弐瓶勉さんの「人形の国」第7巻の物語です。
 前半はリドベア領内を舞台とし、エスロー達の強さが際立つ内容でした。ジェイト達の立ち位置が敵から中立くらいに変化してきています。その代わりに新たな敵として転生者処刑隊が登場し、しばらくはエスロー達の邪魔をしそうですが、どことなく雑魚っぽい雰囲気でした。
 後半はカジワンが率いる真地底教会の様子が描かれました。カジワンの横暴さが際立つ内容でした。カジワンは、時代劇の悪代官のような典型的なザコ悪人に描かれています。カジワンはもう少しカリスマ性のある人物として描いた方が敵として面白かったのではないかと思えます。もしかしたら、カジワンはあっさり死んで、真のリーダーと呼べる存在が真地底教会に現れるというような展開が今後あるかもと期待します。
 なお、「人形の国」第7巻には、通常版と、ミニ画集付きの特装版とがあります。特装版を購入したのですが、ミニ画集というのがコミックと同じ大きさで15ページ程度の薄っぺらいものでした。内容も単行本の本体の巻頭に数ページあるカラー挿絵と大差なく、これでお値段がプラス450円は正直高いと感じました。余程のファンでなければ、通常版で十分たと思います。

 

弐瓶勉 「人形の国」 第6巻

 弐瓶勉さんの「人形の国」第6巻は、2020年5月に発売されました。
 前巻では、人工衛星の落下で地表が寒冷化した世界で、主人公のエスローは脳味噌だけの状態。エスローを治療するためにケーシャ及びタイターニアが奮闘しました。ケーシャの兄のカジワンは、人形病患者を集めて真地底教会を作り、人形病患者を「再生者」として復活させ、自分の配下としています。
 一方、帝国の正規人形であるジェイド及びトオスの元に、科学者タシツマ及び正規人形リナイが巨大な荷物と共にやってきます。荷物は、ジェイドのクローンを巨人化したアジェイドと、彼女を転生させるための人工コードでした。タシツマによるアジェイドの転生実験が始まりました。今巻は、この続きからです。
 それでは以下、「人形の国」第6巻のあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

 人工コードによるアジェイドの転生は成功し、アジェイドは正規人形となります。
 科学者タシツマは、幼少期にいじめられていたところを近所に住む少女シヨバに助けられました。シヨバはコード適合者で、近いうちに転生式を行う事になっていました。しかし、コード適合者でも60%は転生に失敗して死亡してしまいます。シヨバは、戦う事も嫌いで転生式を受けたくないとタシツマに話していました。タシツマは、シヨバと逃げて2人で暮らそうと、廃坑を探索して隠れ家となる場所を見つけます。しかしタシツマがシヨバを迎えに行くと、シヨバは既に転生式のために家を出ており、その後に転生に失敗して死亡してしまいます。タシツマは、コードの研究者となり、転生成功率100%の人工コードを量産して全ての人間を転生させる事を目標に研究を続けてきました。
 転生したアジェイドは、ジェイドと同様に自動機械を操る能力を持っていました。アジェイドは、力を最大限に解放して広範囲の自動機械から情報を集めます。巨大なアジェイドはエナ容量も大きく、その分だけ広範囲の探索が可能でした。力を使い果たしたアジェイドは、鎧化が解け、気を失って倒れます。アジェイドから情報を受け継いだジェイドは、タイターニア及びケーシャを発見し、エスロー及びAMBが匿われている超構造体の部屋の位置を特定します。
 タイターニアは、アジェイドによる探索を察知し、ケーシャと共に超構造体の部屋へと急いで戻ります。2人の後を1人の少年がつけていました。ケーシャはこの少年を捕まえます。少年は、ワサブという名前で、元帝国の転生者でしたが、仲間にしてほしいと2人に頼みます。タイターニアは、ワサブの記憶を読んで嘘をついていない事を確認し、ワサブを仲間にします。
 ジェイド達は、エスロー及びAMBが匿われている超構造体が、地下150キロメートルにあり、最長辺が200メートルの巨大物である事を知ります。リナイは、物質転送の能力を持っており、超構造体ごと地上へ転送する事にします。リナイは、ジェイドと共に地下へ転送し、巨大な超構造体を地上へと転送します。リナイは力尽きて地下で倒れ、ジェイドがリナイを保護します。
 戻ってきたタイターニア達は、そこにあるはずの超構造体がなくなっていることに驚きます。タイターニアは、周辺を探索して、超構造体がちょうど真上の地上にある事を知ります。更には、リドベア帝国の移動首都モースウルベがやってきており、皇帝スオウニチコもこの場に来ているようです。タイターニア達は、ワサブの飛行能力で地上へ向かいます。
 地上に出たタイターニア達がエスローを取り戻す方法を思案していると、カジワンが再生者及び人形病患者達を引き連れて現れます。カジワン達と帝国の兵士達との戦いが始まります。この様子を見ていたタイターニアは、今がAMBで皇帝を倒すチャンスと考えます。エスローはAMBを射出できる程度には回復しているはずで、タイターニアが超構造体の箱に触れればエスローの意識を戻して皇帝の位置を伝達する事ができます。タイターニア達は、瓦礫に偽装して、戦闘のどさくさに紛れて、超構造体へ接近します。
 タイターニア達は、無事に超構造体へたどり着きます。タイターニアは、超構造体に触れて中のエスローを覚醒させると共に、皇帝の位置を教え、AMBで皇帝を倒すよう言います。しかし話の途中でタイターニア達は帝国の5人の上級転生者に捕まってしまいます。5人のうちの1人、リナイは、捕まえたタイターニア達3人と、自分を含む5人の上級転生者とを、皇帝スオウニチコの元へ転送します。スオウニチコは、エスローが超構造体の中からAMBで攻撃してくる事を予測していました。
 しばらくして、超構造体の中からAMBがスオウニチコを狙って発射されますが、スオウニチコはAMBを避けます。AMBが超構造体に空けた穴から、トオスの金属が侵入してエスローを攻撃します。エスローの死を確信したスオウニチコは、タイターニア達3人の処刑を命じます。
 スオウニチコに完全に無視されている状態のカジワンは、最大級の火球を放ってスオウニチコを攻撃しますが、皇帝を守る転生者はこの火球を簡単に弾き返します。スオウニチコは、カジワン達の始末を命じて去ります。
 スオウニチコは、自分の未来視の能力で、ケーシャ達が処刑され、超構造体からAMBを掘り出す作業が始まるまでの未来を見ていました。しかし、ケーシャが処刑されようとしたとき、超構造体の箱が割れてエスローが現れます。これはスオウニチコの見た未来とは全く異なるものであり、スオウニチコはエスローが未来改変の能力を持つ事を確信します。エスローは、ケーシャ達を処刑しようとしていた4人の上級転生者を倒し、スオウニチコの眼前にやってきます。エスローは、スオウニチコを撃ちますが、AMBではなく通常弾だったために、皇帝を守る2人の衛人に阻まれます。この隙にタイターニアは、スオウニチコに近付いてスオウニチコに触れ、スオウニチコの心を読みます。リナイがスオウニチコ及び2人の衛人を別の場所へ転送し、スオウニチコには逃げられてしまいます。エスロー達も、ワサブの飛行能力でモースウルベから離れます。
 カジワン及び再生者達は、地下を逃走していました。カジワンは、スオウニチコに全く相手にされなかった事に怒っていました。
 安全圏まで逃げたエスロー達は、再会を喜び合います。何故かワサブはエスローに懐いています。タイターニアは、スオウニチコの心を読んで得た情報をエスロー達に話し始めます。

 以上が、弐瓶勉さんの「人形の国」第6巻の物語です。
 もはやクライマックスと言える怒涛の展開でした。あとは、お互いに相手の能力を知った者同士がどのように戦うかです。スオウニチコとの決着は近そうです。
 スオウニチコを倒したとして、この物語は終わるのでしょうか?皇帝を倒したところで、世界がそれほど変わるとも思えず、まだまだ先がありそうに思います。地底王国へは行って欲しいですね。
 ただ、エスローの未来改変の能力って、スオウニチコ以外には全く意味がない能力だと思えるので、物語が続いてもこの能力を活かせないのが気掛かりです。

 

弐瓶勉 「人形の国」 第5巻

 弐瓶勉さんの「人形の国」第5巻は、2019年11月に発売されました。
 前巻では、人工衛星「ウメ」が落下して地表は大きな被害を受けました。エスローはかろうじて脳だけが生き残っている状態です。しかし、エスローが持つAMB弾は、リドベア帝国の皇帝の予知能力を覆す力があることがわかりました。
 一方、人形病で死にかけていたカジワンは、タイターニアから奪った腕から、脚が四本の謎の女性を産みだします。カジワンは、この女性の力で正規人形に転生し、火を操る能力を手に入れています。
 今巻は、エスローが復活した数年後から物語が始まると勝手に予想していたのですが、見事にハズレでした。物語は、前巻の直後から始まり、エスローは脳みそ状態でした。
 それでは以下、「人形の国」第5巻のあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

 「ウメ」が落下する少し前。新たな居住地を探して移動しているイルフ・ニクの人々に、タイターニアからウメの落下が警告されます。人々は、タイターニアに教えられた場所に避難し、ウメの落下に耐えきる事ができました。その後、ウメ落下の影響でこの地方は寒冷化し、温暖マスクをしていなければ地表では人が生きていけなくなってしまいます。
 タイターニア及びケーシャは、脳だけになったエスローとAMB弾とを守るため、地下に潜んでいました。リドベア帝国はジェイドが操る偽自動機械を使ってAMB弾の探索を行っています。エスローが完全に復活するには何年もかかりそうでした。ケーシャは、帝国の転生者を倒してエナを集め、エスローを回復させることを決意します。
 カジワンは、「真地底教会」という組織を作り、人形病患者を集めていました。脚が四本の女性は、人間としての意識的がなくなった人形病患者を治療し、人形病患者には意識が戻ってきます。カジワンは、このような者達を「再生者」と呼び、再生者を着々と増やしていました。
 ケーシャ及びタイターニアは、リドベア帝国の拠点の1つにやって来ていました。この拠点には転生者のセチア及びアルがおり、ケーシャ達を誘き出すために、多くの捕虜を檻に入れて高所に吊していました。ケーシャ達が拠点に攻め込もうとしたとき、3人の再生者ジナタ、フィーサ及びタスリが多くの人形病患者を引き連れて拠点に攻め込みます。3人の再生者は、2人の転生者を倒してエナを奪います。更に再生者達は、捕虜達にマスクを外す事を要求し、無理矢理にマスクを奪って捕虜達を殺します。転生者達は、ここが「人形の国」であり、肉体という脆弱な器から解放された者だけが生きる事を許された場所だと語ります。ケーシャ達が止めに入る間もない出来事でした。その後、この拠点にやってきたジェイドは、真地底教会の目的が転生者のエナを奪う事だと気付きます。
 ケーシャ及びタイターニアは、リドベア帝国の転生者ボーが指揮する浮遊船を襲撃してボーを倒し、ボーのエナを奪います。その後、同じく転生者ボーを狙っていた再生者のジナタ達がケーシャ達の前に現れます。ジナタは、ケーシャ及びタイターニアは見逃すようにカジワンに命令されていると言い、姿を消します。真地底教会に戻ったジナタ達は、ケーシャに出会った事をカジワンに報告します。カジワンの元には、ジナタの他にも多くの再生者が集まっており、そのうちの1人が、人間のマスクを外す行為に耐えられないと言い出します。カジワンは、自分の命令に逆らうこの再生者を殺します。
 ケーシャが持ち帰ったエナにより、頭部だけだったエスローに胸部が出来ます。エナでエスローの回復を早める事が出来ると確信したケーシャは、もっとエナを集める事を決意します。そしてケーシャは、その後も正規人形を狩ってエナを集め、エスローの身体は少しずつ復元していきます。
 少し前、ウメが落下した直後。カジワンは、四本脚の女性と共に地下遺跡の最下層にある地底世界との境界にやってきます。しかし地底世界への入口が開く事はありませんでした。そこに居合わせた人形病患者が惹かれるように四本脚の女性に近付いていき、四本脚の女性はこの人形病患者を再生させます。人形病患者に意識が戻るのを見たカジワンは、人形の軍勢を作って帝国を倒せば地底世界に招かれると考えました。
 現在。ジェイド及びトオスの元に、陸路で巨大な荷物が送られてきます。荷物の中身は、数メートルの巨人サイズのジェイドのクローン人間でした。荷物と共にやってきた兵器局のタシツマは、AMB弾探索のためにジェイドの能力を強化すればよいと考え、ジェイドを巨大化したクローンを生み出しました。またタシツマは、巨人ジェイドを正規人形化するための人工コードを開発していました。人工コードは完成しましたが、小型化出来ず、数十メートルの塔のようなサイズです。本物のコードは、手のひらに収まる程度のサイズです。またタシツマは、正規人形リナイを連れてきていました。リナイのクローン及び人工コードを用いた実験は失敗に終わっており、その時には大惨事となったようです。タシツマは、人工コードを用いたジェイドのクローンの転換実験を開始し、転換の光は遠くにいるケーシャ及びタイターニアにも目撃されます。ジェイドのクローン、アジェイドは正規人形へと転換されていきます。

 以上が、弐瓶勉さんの「人形の国」第5巻の物語です。
 とうとう、この作品のタイトルである「人形の国」という単語が物語の中に登場しました。カジワンが作ろうとしている人形病患者を再生した「再生者」の国が「人形の国」のようです。脆弱な肉体の人間は、人形の国の住人としては認めてもらえないようです。つまり、「人形の国」は人間の敵のようです。
 リドベア帝国と、人形の国と、エスロー達との三つ巴の戦いになってきました。この三つ巴の構図は、「BLAME!」における統治者と、珪素生物と、霧衣達との三つ巴の構図によく似ているように思えます。と言うか、何となく「人形の国」は、「BLAME!」の焼き直し感があるように思うのは私だけでしょうか・・・。「BLAME!」の三つ巴は、完全に理解し合えない存在同士の戦いで緊迫感がありました。「人形の国」の三つ巴は、理解し合えそうな雰囲気が残っているため、何となく緊迫感に欠けるような気がします。再生者達は人間を憎んでいるというわけではなく、カジワンの命令で人間を殺しているようで、カジワンがいなくなれば和解の余地はありそうです。ある意味、ハッピーエンドが期待できるとも言えそうですが。
 今巻の物語は、新章が始まって様子見のような内容でした。次巻にはエスローが復活して物語が大きく動き始める・・・といいな、と思います。

 

弐瓶勉 「人形の国」 第4巻

 弐瓶勉さんの「人形の国」第4巻は、2019年4月に発売されました。約半年ぶりの新巻です。
 前巻では、ケーシャの故郷イルフ・ニクが帝国の正規人形トオスの攻撃で壊滅しました。イルフ・ニクの国王且つケーシャの兄であるカジワンは、タイアーニアの左腕を奪って逃走し、「恒差廟」へ向かいます。エスロー達は、カジワンを追います。一方、リドベア帝国の皇帝は、自らの予知能力で、エスロー達が死ぬ運命を見ていました。
 第4巻はこの続きで、カジワンを追うエスロー達から物語は始まります。
 それでは以下、「人形の国」第4巻のあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

 カジワンを追うエスロー、タイターニア及びケーシャは、広範囲に配線を延ばしている機械株を通して周辺の状況を探りますタイターニアは、カジワンを発見しますが、カジワンの左腕にはタイターニアの左腕が癒着しており、重度の人形病で動けなかったカジワンは自力歩行できるまで回復していました。エスロー達はカジワンの後を追います。
 途中、エスロー達は、ブカという名前の少年に出会います。ブカは、リドベア帝国に連行され、プロトラクターという自動機械で運ばれていった村人達を救出すべく追っていました。エスロー達にはブカを手助けする余裕はなく、エスローは強力な弾丸をプロに渡します。ブカはこの弾丸でプロトラクターを倒し、村人達を救出します。
 旅を続けているエスロー達は、何度も見たことがある場所を通過します。空間に歪みが生じているようで、タイターニアはリドベア帝国の皇帝の能力の影響だと話します。皇帝の能力は誰も知りませんが、過去にどんなに皇帝を追い詰めても不測の事態が発生して失敗し、倒すことが出来ませんでした。
 その後、タイターニアが帝国の正規人形に拉致されます。エスローはタイターニアを救出に向かい、ケーシャはカジワンを追うため、二手に別れます。エスローは、エナで爆発性物質を作る能力を持つ正規人形を倒し、タイターニアを取り戻します。エスロー及びタイターニアは、ケーシャの後を追います。
 ケーシャは「恒差廟」に到着し、カジワンを発見します。カジワンは、身体の背中部分が肥大化し、昆虫のような姿になって、恒差廟の最上階を目指していました。カジワンは、恒差廟を使ってリドベア帝国に復讐しようと考えていました。恒差廟は、ウメと呼ばれる気象制御用の人工衛星を操作するための施設であり、カジワンはウメをリドベア帝国の首都へ落下させようと考えていました。カジワンは、恒差廟からウメへの回線を開いて操作しようとしますが、回線をリドベア帝国の正規人形ジェイトに乗っ取られてしまいます。ジェイトは、ウメの落下地点を恒差廟に変更します。
 まだ恒差廟から離れた場所にいるエスローは、ジェイトを狙撃して倒し、回線を取り戻す事を考えます。ウメの落下までの残り時間は17秒です。エスローは、残り6発のAMB弾を使ってジェイトを狙撃します。しかし、ウメの乗っ取りで力を使い果たしていたジェイトはその場で倒れ、これによりAMB弾はジェイトを外してしまいます。これは、リドベア帝国の皇帝の予知した未来と一致していました。
 ケーシャは、カジワンを連れて恒差廟の地下へ避難します。ジェイトは帝国の正規人形トオスの能力で作られた金属の殻に籠もって身を守ります。エスロー及びタイターニアは、近くに隠れる場所もなく、ウメの落下を見つめていました。そしてウメは地表へ落下します。
 ジェイト及びトオスは、エスローが持っていたAMB弾を回収すべく、ウメの落下でできた巨大なクレーターの探索を開始します。恒差廟の地下に隠れて難を逃れたケーシャは、カジワンを残してエスロー及びタイターニアを探しに向かいます。タイターニアは身体の半分を失っていましたが無事でした。エスローは、身体のほとんどを破壊されていましたが、かろうじて脳は無事でした。AMB弾もエスローが守っていました。ジェイト及びトオスがタイターニアの前に現れてAMB弾を奪おうとしますが、ケーシャが助けに現れます。ジェイト及びトオス対ケーシャの戦いが始まりますが、ケーシャに不利な戦いでした。
 その頃、リドベア帝国の皇帝を乗せた大型の浮遊船がクレーターの近くまでやってきていました。皇帝は、クレーター内でジェイト及びトオスとケーシャとが戦っているのを見て動揺します。皇帝の予知では、ケーシャはウメの落下で死亡しているはずでした。
 地下に取り残されたカジワンの背中に出来た肥大部分から何かが誕生します。それは、四本足で背中に羽根の生えた少女の姿をしたものでした。カジワンは、この少女の力を借りてコードを使用し、正規人形へと転換されます。このときの転換の光を目撃した皇帝は、未来が変わってしまった事を悟ります。
 トオスは、ケーシャにトドメを刺そうとしていましたが、正規人形となったカジワンに阻止されます。カジワンは、トオスの操る金属を溶かすほど強い火の能力を持っていました。この隙にケーシャは、タイアーニア、エスローの脳及びAMB弾を回収して地下へと逃走します。トオス及びジェイトは、カジワンが油断した隙に撤退します。カジワンは、誰もいなくなったクレーター内に取り残されます。
 未来予知の能力を持つ皇帝は、予知が外れた事に動揺しつつも、その原因がAMB弾にあることに気付きます。AMB弾には未来を変える力があるようです。しかし、皇帝の未来予知の能力も、AMB弾の力も、気付いているのは皇帝だけでした。
 逃げ延びたケーシャ及びタイターニアは、エスローが回復するまで地下に身を隠す事を決めます。

 以上が「人形の国」第4巻の物語です。
 深夜アニメなら第1シーズン完という印象の内容ですが、漫画は淡々と進んで行きました。無駄に盛り上げようとしない所がいいですね。
 皇帝が未来予知の能力を持ち、それに対抗できるのがエスローのAMB弾のみ。色々と謎が明かされているようですが、何だかジョジョっぽいというか、ジョジョ以降に多発されている能力バトルものっぽくなってきました。能力バトルものは嫌いではありませんが、弐瓶努さんの作品にはもっと違う何かを期待してしまいます。
 次巻は2019年の秋と予告されていました。まだまだ先ですね。復活したエスローの活躍を早く読みたいものです。

 

冲方丁 「小説BLAME! 大地の記憶」

 冲方丁さんの「小説BLAME! 大地の記憶」は、弐瓶勉さんの漫画「BLAME!」を小説化した作品であり、2017年5月に発売されています。映画「BLAME!」の公開に合わせて発売された作品です。かなり著名な作家さんである冲方丁さんが小説化を行ったということで、期待大な作品です。
 内容は、オリジナルストーリーではなく、漫画の第1巻~第2巻の内容をリメイクして小説化したもののようでした。漫画では説明が少なく意味不明のままに読み進めていた1、2巻ですが、小説はしっかりと文章で説明されているため、とても分かり易いです。例えば、第1話に登場していた子供は漫画では何者だったのかよく分かりませんでしたが、小説ではこの子供がネット端末遺伝子を持つ子供だった事が明記されています。ある意味、漫画の解説本として小説を読むことができます。ただし、小説はあくまで冲方丁さんの解釈であって、弐瓶勉さんの考えとは異なっている可能性はありますが。
 それでは以下、「小説BLAME! 大地の記憶」のあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

 霧亥は、ネット端末遺伝子を持つ少年を連れて、少年を保護できる場所を目指して階層都市を旅していました。しかし珪素生物の襲撃に合って少年は連れ去られ、霧亥は珪素生物を倒して少年を奪い返しますが、少年は死亡していました。
 霧亥は、少年の遺体を人間の女に預けます。女は、ここから三千階層上に居住区が見つかった事を霧亥に伝え、確認を依頼します。
 数千階層上で霧亥は、子供の姿をしたセーフガードに出会います。
 更に上の階層で霧亥は人型の系統分岐種の少女を助けます。少女は霧亥と意思疎通しようとしますが、大人達が現れて少女を連れて姿を消します。
 その後、霧亥はどこからか聞こえる声に導かれて、人間が生活している階層にたどり着きます。ここで霧亥は、「塊都」には遺伝子技師がいるという話を聞き、運送業をしているテツ及びヨシオの浮遊式マグボードに塊都まで同乗させてもらいます。テツは、「生電社」に荷物を運ぶ仕事をしていると話します。塊都へ向かう途中、マグボードは「乾人」の襲撃に合います。乾人は、霧亥が以前に遭遇した人型の系統分岐種でした。テツが犠牲になりますが、霧亥の活躍でマグボードは塊都にたどり着きます。ここで霧亥は、マグボードの積み荷が乾人がの遺体であり、その中には以前に霧亥が出会った少女が含まれていることを知り、マグボードや積み荷を取りに来た生電社の機械等を破壊します。珪素生物のよ
うな外殻機械を装備した生電社の人間が3人現れて霧亥の重力子放射線射出装置を奪おうとします。攻撃を受けた霧亥は、建物の外へ飛ばされます。
 建物の外は塊都の居住区で大勢の人間が行き交っていました。霧亥は、生電社を目指して街を歩き、生電社の建物に侵入します。この建物の中で霧亥は、拘束されて死骸のような姿となっている女性に出会います。この女性が霧亥を呼んでいた声の主であり、生電社の元科学者だったシボでした。シボは、生電社は塊都の人々の遺伝子情報を保存していると話し、情報にアクセスできる場所へ案内します。目的の場所に到着し、シボは情報へのアクセスを開始しますが、生電社の警備が現れます。警備の攻撃を受けたシボの身体は崩れ落ちます。霧亥は、最後にシボから受け取った経路情報に従って、記録保管室へ向かいます。
 霧亥は、記録保管室で情報を調べますが、得られたのは何かの実験記録で、シボが欲する情報のようでした。記録保管室に、以前に戦った外殻機械を装備した3人が現れます。攻撃を受けた霧亥は、右腕を切り落とされて危機に陥りますが、突然に3人が苦しみだします。そこに、新たな身体を手に入れたシボが現れます。3人はシボの電子的な攻撃で動けなくなったようです。霧亥は、3人にとどめを刺します。霧亥及びシボは、一時撤退します。
 シボは、知り合いの集落に霧亥を連れて行き、霧亥の右腕を治療します。霧亥は、この集落に、以前に見た子供の姿をしたセーフガードが紛れ込んでいるのを発見しますが、見失います。その後、この集落に珪素生物が攻め込んできます。霧亥及びシボは、珪素生物を撃退します。珪素生物は、生電社と取引しており、頭取の依頼で霧亥及びシボを倒しに来ました。生電社では合成ネット端末遺伝子の実験を行おうとしているようです。霧亥及びシボは、セーフガードを呼び出してしまう実験を阻止するため、生電社へ向かいます。
 2人は生電社に乗り込み、シボは生電社の頭取と、霧亥は頭取を守る珪素生物と戦い、共に打ち倒します。更に、子供の姿のセーフガードが現れ、霧亥はこれも倒し、2人は生電社から去ります。
 その後、2人はこの階層の天井から吊り下がる柱廊を登って、天井の超構造体を目指します。その途中、ネットスフィアの支配レベルの代理構成体が出現し、霧亥にメッセージを送ってきます。代理構成体は、ネット端末遺伝子を持つ人間を霧亥達が見つけると信じていると語ります。霧亥及びシボは、柱廊の頂上に到着し、重力子放射線射出装置で超構造体に孔を開けて上の階層へ向かいます。

 以上が冲方丁さんの「小説BLAME! 大地の記憶
」の物語です。
 概ね原作の漫画の2巻までに沿った内容でした。小説では霧亥の内面描写もあり、BLAME!の物語がとても分かり易く表現されていました。ただし、あくまでも冲方さんの解釈であって、弐瓶さんの考えと同じとは限らないと思われます。霧亥の内面描写では、私が思う霧亥と少し違う印象を受ける場面もありました。
 小説版での正電社との戦いは、漫画版よりも少し増量した内容とされています。小説版のクライマックスですので、盛り上げるためのものでしょう。実際、盛り上がります。映画はオリジナルストーリーでしたが、この小説の内容で映画化もアリだったのではないかと思えます。
 小説版が漫画の2巻までの内容で終わってしまうのが惜しいです。是非とも続きを執筆して頂きたいですね。