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上地優歩 「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」

 上地優歩さんの「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」は、「スカイ・クロラ」の世界を舞台とした別の物語を漫画化した作品であり、2008年に雑誌での連載が開始され、2009年に全2巻の単行本が発売されています。
 この作品は、森博嗣さんの「スカイ・クロラ」を漫画化したものではないことに注意が必要です。森博嗣さんの「スカイ・クロラ」を原作とする映画「スカイ・クロラ」が2008年に公開され、この映画の設定に基づく任天堂Wii用のゲーム「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」が2008年に発売されています。このゲーム「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」を漫画化したものが、上地優歩さんの「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」です。なので、上地優歩さんの「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」は、もちろん共通設定としてキルドレや散香といったキーワードは登場するのですが、森博嗣さんの「スカイ・クロラ」からはかなり遠い存在でした。
 上地優歩さんの「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」の物語は、映画「スカイ・クロラ」より前の時代、キルドレという存在があまり一般的に広まっていない時代を舞台とし、最初期のキルドレである「オリシナ」という女性を主人公としています。映画「スカイ・クロラ」でカンナミ及びクサナギ達が所属していた陣営とは敵対する陣営での物語です。なお、カンナミ及びクサナギが、物語の最後に、ファンサービス的にほんの少し登場します。
 以下、上地優歩さんの漫画「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」の物語です。全2巻分をまとめてざっくりとあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

<第1巻>
 ロストック社とラウテルシ社とがかりそめの戦争を繰り返す世界。
 ラウテルシ社のある基地に、新しいパイロットがやって来ます。この基地のパイロットたちは、紹介された新しいパイロット、オリシナ・マウミを紹介され、彼女がほとんど子供にしか見えないことに驚きます。パイロットのヒナギやパイロットの世話係のスノエダはオリシナと仲良くしようとしますが、この基地で2番目の腕を持つタカハシはオリシナに対して喧嘩腰です。次の日に戦闘が発生し、オリシナは自身の腕を見せつけて8機を撃墜し、パイロットたちはオリシナの実力を認めます。
 オリシナは小隊のリーダとなります。これに反発したタカハシがオリシナに食って掛かりますが、基地のエースパイロットであるツルホが仲裁します。ツルホは、キルドレの存在を知っており、オリシナが敵であるロストック社の元パイロットであることを知っていました。
 次の戦闘でもオリシナは飛び抜けた戦果を挙げます。ツルホもオリシナの実力を認めます。戦闘中に助けてもらったお礼にと、ヒナギはオリシナを基地の外へ食事に連れていきます。やって来たレストランには、先客としてタカハシがいました。気まずい雰囲気のまま、オリシナ、ヒナギ及びタカハシは同じテーブルを囲むことになります。酒に弱いヒナギはすぐに酔いつぶれてしまい、二人で会話をすることになったオリシナ及びタカハシは少し打ち解けることができます。タカハシは、事故の後遺症で眠り続けている妹を生かし続けるために飛行機に乗っていると語ります。
 次の日、オリシナに新しい戦闘機が与えられます。この戦闘機は、ロストック社からの鹵獲機の散香でした。
 ある日、出撃したオリシナ小隊は、近くで交戦中の味方の通信を受け、援護に向かいます。敵は偵察機が一機だけでしたが、その操縦技術は凄まじく、戦闘機で追いつくことができません。オリシナはこの偵察機の飛び方に見覚えがあり、パイロットが「チータ」であると確信します。偵察機に攻撃を仕掛けたヒナギは、逆に撃ち落とされてしまいます。オリシナは、撤退を決定します。
 帰還した基地は、ヒナギの死により悲しみに包まれています。オリシナは、戦闘の報告を基地の指令と、居合わせた情報部のトバザキに対して行います。トバザキは、偵察機に乗っていたのが「チータ」であること、「チータ」がオリシナの元同僚であったことを知っていました。
 次の日、スノエダが買い出しにオリシナを連れ出します。オリシナは、死に際にヒナギが「スノエダさんによろしく伝えてください」と言っていたことを話します。スノエダは、本当はヒナギと買い出しに行く約束をしていたと話し、涙を流します。オリシナは、悲しむのが普通だと思いながらも、「チータ」と戦うことができたヒナギを羨ましいと感じます。

<第2巻>
 オリシナは、情報部のトバザキに連れられて極秘の会議に参加します。極秘の会議は、敵であるロストック社のモズメとの会談でした。モズメは、オリシナをロストック社からラウテルシ社へ移籍させた人物です。モズメもラウテルシ社への移籍を考えており、数名の「キルドレ」とロストック社が極秘に製造している空中要塞「ウルフラム」とを移籍の手土産として持ってくることを約束します。そしてオリシナは、「チータ」と戦いたいと考え、「チータ」との戦いを実現するために敵であるラウテルシ社へ移籍を決断したようです。
 会議を終えたオリシナは、会議場の近くの飛行場から、自らの基地まで戦闘機を操縦して帰ることになります。しかしトバザキの策略により、この戦闘機の機銃には弾が入っていませんでした。オリシナの戦闘機に対して3機の敵機が攻撃を仕掛けてきます。敵機はキルドレが操縦しているようです。オリシナは逃げ回りますが振り切ることはできません。そこへ、ツルホの小隊が救援に駆け付けてきます。ツルホは、小隊の部下達をオリシナの護衛としてオリシナを逃がし、自身は敵機に体当たりして散っていきます。
 基地に帰還したオリシナは、ツルホの死に方を理解できないと話し、仲間たちの反感を買ってしまいます。ツルホと付き合いの長いタカハシは、あいつにとっては幸せな最後だったのかもしれないとオリシナに語ります。
 その後、モズメ及び彼と共に移籍しようとしたパイロット達は、全て撃墜されたという情報がオリシナにもたらされます。モズメ達を撃墜した敵機の中には、黒猫のエースが含まれていました。オリシナは、「チータ」と戦う日が近付いていることを感じます。基地の司令官は、モズメの計画が失敗したことで、オリシナをこれまでのように特別扱いすることはできなくなったと言いますが、トバザキがオリシナの後見人となることでパイロットを続けることができます。トバザキは、”苦労”することも多いと思うが、今まで通り戦果を挙げてくれと言います。
 その後、基地の司令官は他のパイロット達に、オリシナが元ロストック社のパイロットであることをばらし、ツルホの部下だったパイロット達をオリシナの部下とします。トバザキが言う”苦労”とはこのことのようです。ツルホの部下だったパイロットたちはオリシナに反発しますが、タカハシがこれを仲裁します。オリシナは、タカハシにありがとうと言います。
 大規模な戦闘が行われることになり、オリシナには敵エースの「黒猫」を撃墜する命令が与えられます。トバザキは、「チータ」が現れたら邪魔をせずに一対一で戦わせることをオリシナに約束します。基地から全機が出撃し、数回の戦闘を経てオリシナは「チータ」を発見します。味方機は撤退し、オリシナと「チータ」との一対一の状況となりますが、地上から高射砲が二機を攻撃します。トバザキが二機をまとめて始末しようとする陰謀でした。オリシナは高射砲を全て破壊し、「チータ」との戦闘を再開します。オリシナは「チータ」との戦闘を最高のダンスだと楽しみます。そしてオリシナの機体は「チータ」に背後を取られて攻撃され、墜落していきます。
 最初期のキルドレであるオリシナの物語をクサナギはカンナミに語り終え、カンナミはその人は死んだのかをクサナギに尋ね、クサナギは誰にも分らないと答えます。

 以上が、漫画「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」の物語です。
 悪役であるトバザキの行動原理が全く分からず、何だかイマイチな物語でした。「スカイ・クロラ」にあんな分かりやすい悪役や、会社間の陰謀などの展開は不要ではないかと思います。もっとパイロット達を中心とした物語の方がよかったような気がします。
 何となくオリシナ=クサナギをにおわせているような気がしなくもないですが、真相はわからないです。
 物語の内容はさておき、この漫画の最大のダメな点は、メカ及び戦闘等の描写の貧弱さです。「スカイ・クロラ」において最も大事だと思われる、散香が空を飛び回り、敵機と戦うシーン。それがこの漫画では全く美しくないです。
 作者の上地優歩さんは、おそらくは少女漫画を描いている方なのだと思われます。このため、漫画「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」は全体的に少女漫画風の絵柄です。メカや戦闘シーンは少女漫画風の薄いものになっています。どのような経緯で上地優歩さんが本作を描くことになったのかは不明ですが、「スカイ・クロラ」の漫画化に少女漫画作家さんを選んだのは間違いではないかと思います。人物を描くのが多少下手な人でも、もっとメカや戦闘シーンを上手く描ける漫画家さんにお願いした方がよかったのではないでしょうか。
 結論として、漫画「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」はイマイチでした。ただし、読まない方がいいと言うほど酷い作品と言うことはなく、一度くらい読んでみてもいいかなという気はします。
 ゲーム「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」をプレイしていればもう少し漫画版の印象も変わるかもしれません。このゲームは、任天堂Wii用のゲームであり、恐らくはフライトシミュレータとシューティングゲームの間くらいのゲームなのだと思われます。アマゾンでのユーザの評価は結構高めで、面白そうです。何よりも飛行シーン、戦闘シーンのグラフィックが美しいらしく、「スカイ・クロラ」の世界に浸ることができるとか。ちょっとプレイしてみたいですね。でもWiiか…。




映画 「スカイ・クロラ」

 映画「スカイ・クロラ」は、2008年8月に公開されたアニメ映画です。もちろん、森博嗣さんの小説「スカイ・クロラ」を原作とした作品で、押井守監督が手掛けた作品です。
 映画「スカイ・クロラ」は、スカイ・クロラシリーズを映画化したのではなく、小説「スカイ・クロラ」単体を映画化したものでした。少しだけ「ナ・バ・テア」に含まれるシーンが挿入されてはいましたが、95%くらいは小説「スカイ・クロラ」そのままでした。
 映画において変更された原作の設定として目につくのは、ササクラが女性になっていたことです。女性といっても、よくありがちな巨乳美女のメカニックではなく、おばさんです。ササクラを男性から女性へ設定変更した意図はよくわからないところです。
 かなり原作通りのため、原作を知って映画を見てみると、先のストーリーが予測できるため安心してみることができます。ただし、原作通りなのは、カンナミがクサナギに対して銃を向けるところまでです。それ以降の物語は、原作とは全く異なる展開となります。物語最後のわずかな部分だけではありますが。
 映画では、原作通りに、カンナミがクサナギに銃を向けて引き金を引きます。原作では銃弾によりクサナギが倒れ、カンナミはいずこかへ収容されて物語が終わりました。ところが、映画ではカンナミの撃った銃弾はクサナギにあたりません!原作通りと思って安心して映画を見ていたので、この展開は非常に驚きました。最後の最後でこんな罠が仕掛けられていたとは。
 映画では、その後に出撃したカンナミがティーチャに遭遇して撃墜され、死亡してしまいます。そして基地には、カンナミの代わりの新しいパイロットがやってきて物語は終わります。

 私は、小説のスカイ・クロラシリーズにおいて、カンナミ=クサナギという結論を出しています。しかしながら映画「スカイ・クロラ」にはこれは当てはまらないようです。
 映画「スカイ・クロラ」では、クリタ=カンナミ=新たにやって来たパイロットという関係のようです。映画では、クローン技術なのか、蘇生技術なのか、キルドレは死んでも生き返るような存在なのか、詳しい裏設定はわかりません。しかし、クリタが死亡して、クリタにほぼ等しい存在であるカンナミがやって来ます。そしてカンナミが死亡して、カンナミにほぼ等しい存在である新たなパイロットがやって来ます。これはカンナミに限ったことではなく、映画ではカンナミ以外のパイロットも死亡すると、そっくりな新パイロットが配属されてくるという描写がなされています。物語冒頭のカンナミが飛行機に乗って基地へやってくるシーンと、物語最後に新しいパイロットが飛行機に乗って基地へ やってくるシーンはほぼ同じでした。
 これらは押井守監督によるものなのか、森博嗣さんによるものなのかは分かりませんが、原作を読んだ人も読んでいない人も映画を楽しむことができる点で、優れた原作の改変だったと思います。

 原作のファンとして、映画を見てイメージと違うと感じたのは、フーコのキャラクタデザインでしょうか。もう少し子供っぽい女性を想像していました。
 それから、飛行機に乗ると何故かパイロットが英語で会話するのも違和感ありました。登場人物の名前が少し日本人っぽいですが、小説を読んでいてこの物語は日本の物語とは思っておらず、架空の世界の架空の国での物語と思っていました。例えが難しいですが、小説は何というかおとぎ話のような雰囲気を持っていたように思います。ですので登場人物達は日本語ではなく架空の言語を話していると。
 ところが映画では、飛行機に乗ったパイロットがわざわざ英語に切り替えています。ということは、逆に見れば普段は日本語を話しているということになります。さらにはこの物語が架空の世界ではなく日本での物語ということになってしまい、原作が持っていたいい意味でのおとぎ話感が薄れてしまいます。セリフは日本語で統一した方がよかったのではないかと個人的には思います。

 映画を見てすばらしかったのは、やはり戦闘機が飛行するシーンや戦闘シーンでした。散香が飛行するシーンはまさに美しいとしか言いようがないです。小説の飛行シーンは詩的な表現がなされており、独特の美しさがありました。「スカイ・クロラ」には飛行シーンの美しさが欠かせないと思われ、その点で映画「スカイ・クロラ」は大満足の作品でした。小説「スカイ・クロラ」を読んだ人には必見の映画だと思います。

 

 映画を見て、散香のプラモデルが作りたくなりました。調べてみると、3種類のプラモデルが見つかりました。
 バンダイのEXモデルとして1/72スケールの散香が発売されています。なぜか1箱に2機入っています。残念ながら現在では手に入れるのは難しく、9千円程度のプレミア価格がついています。



 ファインモールドから1/48スケールの散香が発売されています。これも手に入れるのは難しく、1万円以上のプレミア価格がついています。



 そして、プラッツから1/144スケールの散香が発売されています。約5000円です。1/144スケールと言うと、完成品の大きさはガンプラHGUCのガンダムに付いてくるコアファイターくらいの大きさと予想されますが、これで5000円は少し高いような…。



 飛行機のプラモデルを作ったことがない初心者としては、大きさも手ごろで造り易そうなバンダイ製の散香が欲しいところです。バンダイさんがそのうち再版してくれることを信じます。プレミアムバンダイで受注生産販売してくれないものでしょうか…。

森博嗣 「スカイ・イクリプス」

 森博嗣さんの「スカイ・イクリプス」は、2008年に発売されたスカイ・クロラシリーズの短編集です。これまでにスカイ・クロラシリーズに登場した様々な人物を主人公とした8つの物語が収録されています。単に登場人物の日常的な風景を描いた作品もあれば、これまでのスカイ・クロラシリーズに残されている謎に迫る作品もありました。特に最後の2作品は、スカイ・クロラシリーズを読んだ人には必読の作品でしょう。
 以下、「スカイ・イクリプス」に収録されている各作品のあらすじです。ネタバレ注意です。

<ジャイロスコープ>
 ササクラを主人公とし、ササクラ及びクサナギの日常を描いた短編です。ササクラは、クサナギの散香の部品の改良にいそしんでいます。ある日、情報部の命令で、広告用の映像を撮影するために、クサナギがデモ飛行する事になります。ササクラは、クサナギが飛行する姿を間近で見る事ができました。

<ナイン・ライブス>
 明記はされていませんが、彼=ティーチャが主人公の物語です。彼は、自分の子供と共に、モナミとの生活を始めています。彼は、指導員になる道を基地の司令官に勧められますが、パイロットでいることを望みます。

<ワニング・ムーン>
 「スカイ・クロラ」においてカンナミが墜落して海を漂った経験があると話していました。「ワニング・ムーン」はこのときのカンナミの様子を描いているようです。
 墜落して海を漂った僕(この物語では「僕」という一人称は用いられていませんが、ここでは便宜上、主人公を「僕」とします)は、通りがかった貨物船に救出されます。貨物船の副船長が偶然に墜落した飛行機を発見したようです。副船長は、船から海に身を投げようとしていたところでした。救出された日の夜、僕は甲板で副船長に会って話をします。次の日の朝、副船長は船には乗っていませんでした。

<スピッツ・ファイア>
 基地の近くにあるドライブインにやってくる人々の様子を描いた短編です。彼や彼女としか記載されていないのですが、基地司令官となった後のクサナギ、クリタ(カンナミの可能性もあります)、フーコなどの人々が登場します。

<ハート・ドレイン>
 クサナギとカイの出会いの物語です。
 自軍の戦闘機が敵の爆撃機に体当たりして撃墜し、市街地に墜落する事件が発生します。事後処理のために、体当たりした戦闘機のパイロットが収容された病院へやってきたカイは、このパイロットと共に飛んでいたクサナギという女性パイロットに出会います。カイは、体当たりした戦闘機のパイロットがクサナギだったと世間に発表するという案を上司に提案します。この案は成功し、カイは出世します。

<アース・ボーン>
 新しい登場人物であるマシマを主人公とする物語です。マシマはトキノの相棒という設定で、時系列的に「スカイ・クロラ」より後の物語のようです。
 マシマ及びトキノは、敵を6機倒し、味方を1機落とされて基地に帰還します。その後、マシマ及びトキノは、フーコたちのいる館を訪れます。フーコは、お金が貯まり、この仕事を辞めて店を開くつもりであると語り、クサナギのことを気にかけます。トキノは、クサナギからフーコが金を貰ったという噂をマシマに話します。それから半月後、館を去ったフーコから基地の皆様宛てで手紙が届きます。

 この物語は、シリーズ全体を理解するために必要な情報が含まれていそうです。フーコがクサナギからお金を貰い、お金が貯まったフーコは仕事を止めました。これまでの物語では、クサナギとフーコとの間に何か親しい間柄があるような描写はありませんした。このため、「クレィドゥ・ザ・スカイ」で僕がフーコに助けを求めた事実が、僕=クサナギと判断する事を妨げていました。しかしこの短編で、クサナギはフーコにお金を渡す理由があり、2人の間には何らかの関係があったことが暗示されています。

<ドール・グローリィ>
 明記はされませんが、クサナギ・ミズキを主人公とする物語です。時系列的には「スカイ・クロラ」の後の物語のようで、ミズキが大人になっていることから十年は経過していると思われます。また回想シーンとして、これまで明らかにされていなかった、クサナギがクリタを射殺する物語が描かれています。シリーズの謎に迫る重要な物語です。
 彼女は、カンナミが収容されている病院へ面会にやってきます。彼女は就職して音楽教師になったことを話し、カンナミはそろそろ病院を出れるかもと話します。
 病院からの帰り、彼女は過去の出来事を思い出します。彼女は、姉と一緒にある街を歩いています。姉は、仕事で人を探していると言い、ある店の前で立ち止まります。姉は、店の老人に探している人の居所を教わります。姉は、彼女を連れて教えられたビルへやってきます。姉は、彼女を下で待たせ、階段を上って一つの部屋のベルを鳴らします。ドアが開いて出て来た女性に姉は「クリタに会いにきた」と告げ、中から若い男が現れます。彼を連れて帰ろうとする姉に対して、彼は「ここで僕を撃って下さい」と頼みます。彼と姉は場所を移し、銃声が聞こえた後、姉は彼女の元へ戻って来ます。
 彼女がカンナミに会いに行ってから半年後、彼女はある駅へやってきます。駅にはカイが迎えにきています。カンナミは病院を出てこの街で暮らし始めていました。カイは、車で彼女をカンナミの住む家へ連れて行きます。カンナミはこの家で普通の生活をし始めていました。彼女は、お土産に手編みのカーディガンをカンナミに渡し、「お姉様のために編んだのよ」と言います。

 「スカイ・クロラ」の最後で病院に収容されたカンナミが、その後に病院を出ることが出来たようですね。少し後味の悪い「スカイ・クロラ」が、これで救われた気分です。十年くらいは病院暮らしだったようですが。
 彼女の最後のセリフから、やはりカンナミ=クサナギのようです。ミズキもこの事実は知っているようですね。
 クリタの最後も描かれていて、ある意味で回答編と言うべき短編でした。

<スカイ・アッシュ>
 時系列ではシリーズ全ての作品の最後の物語であり、シリーズ全体のエピローグという感の短編です。明記されていませんが、クサナギが主人公の物語です。女性が主人公なので、カンナミではなく、元に戻ったクサナギが主人公です。
 彼女が車で旅をし、田舎の道路沿い建つ一つのお店にたどり着きます。この店は、フーコの店でした。彼女とフーコは、再会を喜びます。

 物語の内容はこれだけです。クサナギとフーコが親しい関係にあったことが明かされ、事件解決後に二人が幸せに暮らすことができたことが暗示されています。
 この物語から、「クレィドゥ・ザ・スカイ」でフーコに助けを求めた人物がクサナギであっても矛盾しないことになり、シリーズ全体のつじつまが合ったということになりそうです。まだ語られていないのは、クサナギとフーコがいつどのようにして親しくなったのか、でしょうか。この短編に、回想シーンとしてでも挟み込んで欲しかったところです。

 これでスカイ・クロラシリーズは完結です。読む前はもっと気楽に読めるSFもの又は飛行機バトルものを想像していましたが、実際にはかなり気合いを入れて読まなければならない作品でした。ですが、とても面白い作品ですので、気合いを入れて、読んでみて下さい。

 

森博嗣 「クレィドゥ・ザ・スカイ」

 森博嗣さんの「クレィドゥ・ザ・スカイ」は、2007年に発売された作品で、スカイ・クロラシリーズの最後の長編作品です。この後に、スカイ・クロラシリーズの短編集として「スカイ・イクリプス」という作品が2008年に発売されていますが、「クレィドゥ・ザ・スカイ」は長編作品としては最後なので、一応はシリーズの完結編と考えられる作品です。
 これまでと同様に、この物語も「僕」の視点で描かれています。これまで、「スカイ・クロラ」はカンナミ、「ナ・バ・テア」及び「ダウン・ツ・ヘヴン」はクサナギ、「フラッタ・リンツ・ライフ」はクリタが「僕」でした。今回の「クレィドゥ・ザ・スカイ」の「僕」は、・・・これがこの物語の最大の謎です。「僕」が誰なのか、その答えがはっきりと示されることは最後までありません。語り手である「僕」自身も自分が誰なのかわからないという状況です。なかなかに難解な物語です。この叙述トリック的な罠を仕掛けるために、作者はこれまで「僕」を主人公として物語を描いてきたのでしょう。計画的な犯行ですね。
 以下、「クレィドゥ・ザ・スカイ」の物語です。ネタバレ注意です。

<プロローグ>
 僕は、病院を抜け出し、女性に電話をかけます。久しぶりに連絡がきたことを喜ぶ女性は、車で僕を迎えに来ます。

<エピソード1>
 フーコが働く館で目を覚ました僕は、フーコの家に転がり込みます。フーコは、館を出て一人暮らしを始めて3、4ヶ月でした。
 フーコは、仕事を休み、僕を連れて車で旅行に出ることにします。当てもなく車を走らせたフーコと僕は、夜になって見つけたモーテルに泊まります。僕は、フーコからお金を貰い、モーテルの外にある電話ボックスからある女性に電話をかけます。女性は、周囲に気をつけて自分の所へ来るよう僕に言います。僕は、これまで頭がボーッとした状態が続いていましたが、この頃になると頭が大分はっきりしてきました。ボーッとしていたのは、病院で投与されていた何らかの薬が原因のようです。
 2ヶ月くらい前、この女性は病院にいる僕に面会しに来ました。女性は、裁判中であまり自由がきかないことを話し、僕に銃を向けたことを謝罪します。しかし僕は何のことか思い出せません。女性は、こっそりと僕の身分証明書に連絡先を書き、僕に何かの注射を打って帰って行きました。
 モーテルに戻った僕は、明日で別れることになるとフーコに告げ、お礼を言います。

<エピソード2>
 次の日、僕は、フーコと別れてバスに乗り駅へやってきます。駅で電車乗り眠ってしまった僕が目を覚ますと、目の前にフーコが座っています。サガラ・アオイの元へ向かって匿ってもらおうとしている僕は少し戸惑いますが、黙っています。目的の駅に着いた僕は、フーコを待たせて、電話をかけるために電話ボックスへ入ります。僕が電話をかけようとしたとき、誰かが電話ボックスへ入って来ます。それは、クサナギでした。クサナギは、拳銃で僕を撃ちます。
 僕が目を開けると、僕はまだ電車の中でした。フーコはいません。夢だったようです。
 駅に着いた僕は、迎えに来たサガラと合流し、サガラの家へ向かいます。サガラの家は、森を抜けて人里離れた岡の上にあります。そして家には格納庫があり、中には飛行機が止まっていました。家に入って食事をしていると警察が訪ねて来ますが、僕とは関係ないようです。
 昼食の後、僕は一人で周辺を歩きます。しばらくすると一機の戦闘機が飛来し、サガラの家の上で何かの荷物を投下して去って行きます。
 夕食を取っていると、新聞記者のソマナカがサガラを訪ねて来ます。僕は見つからないよう、ロフトに隠れます。ソマナカは、ソマナカにクサナギについての話を聞きに来ました。ソマナカは、この前の大きな戦闘でクサナギが死んだこと、クサナギがクリタを撃ち殺したことを本人から聞いたことなどを話します。

<エピソード3>
 次の日、サガラは知り合いの精神科医ハヤセの病院へ僕を連れて行きます。診察を終えて病院を出ると、サガラの車の周りを男達が見張っています。追っ手を振り切るために僕はサガラと一旦別れ、歩いて病院の敷地から外へと出て行きます。
 しばらく歩くと、クサナギが近づいて来ます。クサナギは僕をカンナミと呼び、銃を持っているなら私を打って逃げろと言います。それで自由になれる、とも。僕が一度目を瞑って開いたときにはクサナギは消えています。クサナギは幻覚だったようです。
 しばらくして、追っ手を巻いたサガラが車で迎えに来ます。サガラは、自動車工場で車を乗り換え、家に戻ります。しかし上空にはヘリが飛んでおり、サガラの家を見張っています。サガラは家に火をつけ、僕とサガラは格納庫の飛行機で脱出し、追ってきたヘリを振り切って、サガラの仲間の隠れ家へ向かいます。
 河原の土手にあるトンネルが隠れ家でした。隠れ家には数人の仲間がいるようです。隠れ家に入った僕は、クサナギが階段に腰掛けてこちらを見ているのに気づきます。しかし僕が一瞬目をそらした後、クサナギは消えていました。

<エピソード4>
 隠れ家は、昔の防空壕で、下水道に通じているようでした。隠れ家には格納庫があり、そこには一機の散香が格納されていました。
 翌日、合流する予定だった医師ハヤセから連絡がありません。ハヤセは捕まったと判断し、隠れ家を引き払うことになります。散香のパイロットは既に死亡していたため、僕が散香を別の隠れ家まで運ぶ役を買って出ます。
 しかし、僕達が隠れ家を出る前に、二機の戦闘機が上空に現れて爆撃を開始します。僕は、散香で飛び立ち、二機の戦闘機を撃墜し、更にやって来た二機の戦闘機も撃墜します。
 僕が散香を地上へ降ろすと、隠れ家は既に制圧されていました。散香から降りた僕は兵士達に囲まれます。その後、止まっていた車から降りて僕の元へ近づいてくる女性は甲斐でした。甲斐は、僕がパイロットに戻れることを約束します。
 一人の兵士が、隠れ家に残って抵抗しているのはサガラ一人だけと甲斐に報告します。僕は、サガラを説得するため、一人で隠れ家に入って行きます。隠れ家の奥で僕はサガラを見つけ、説得しますが、サガラはここで死ぬことを選びます。サガラは、僕の病院を訪れた際にした注射によって、僕がキルドレに戻ったことを確認したと話します。サガラは僕に銃を渡して自分を撃つことを頼み、僕は引き金を引きます。
 隠れ家から外へ出た僕は、甲斐と共に車へ乗り込み、出発します。僕の頭の中にかかったモヤは晴れ、クリアになっていました。

<エピローグ>
 半年後、僕はパイロットとして復帰していました。ある日、僕が基地の外をランニングしていると、新聞記者のソマナカが話しかけてきます。ソマナカは、僕がクサナギに似ていると言います。ソマナカは、死んだと言われていたクサナギが半年前に復帰したこと、半年前に非武装地帯で戦闘機が四機撃墜された事件で、戦闘機を撃墜したのがクサナギであること、ソマナカはこのときの写真を撮ったが全て押収されてしまったことを話します。ソマナカは、僕のことを「カンナミ」と呼び、ブーメランのキーホルダーを僕にプレゼントします。ソマナカは、「僕はあなたの・・・」と言いかけてやめ、去って行きます。ソマナカと別れた僕は、キーホルダーを川に投げ捨てます。

 以上が「クレィドゥ・ザ・スカイ」の物語です。
 難解な物語でした。
 この「クレィドゥ・ザ・スカイ」の主人公である「僕」は、クサナギであり、且つ、カンナミである、という結論のようです。そしてこのシリーズにおいてクサナギとカンナミとは同一人物であり、「スカイ・クロラ」に登場したクサナギは会社が用意した偽物と言うことになりそうです。「クレィドゥ・ザ・スカイ」の中で科学者のサガラが、次に会うときには姿形が変わってしまっているかもしれないと話すシーンがあったので、人間の外観(性別も?)を変えることができる技術はこの物語の世界に存在していると考えていいと思います。
 シリーズを時系列でクサナギについて振り返ってみると、以下のような感じでしょうか。
 「ナ・バ・テア」:クサナギが出産してキルドレではなくなる。
   ↓
 「ダウン・ツ・ヘヴン」:クサナギが会社のエースパイロットとして手放せない存在となる。
   ↓
 「フラッタ・リンツ・ライフ」:クサナギは基地の司令官となっている。
   ↓
 (*)大きな空戦でクサナギは死亡したとされるが、病院に収容されていた。
   ↓
 「クレィドゥ・ザ・スカイ」:サガラの注射でクサナギがキルドレに戻る。
   ↓
 「スカイ・クロラ」:クサナギはカンナミとなり、偽クサナギが司令官を務める基地へ配属される。カンナミ(クサナギ)が偽クサナギを銃で撃つ。

 シリーズの最終エピソードとされる「スカイ・クロラ」では、本物のクサナギ(カンナミ)と偽物のクサナギとが出会ってしまったことで最後に悲劇が起きたということなのでしょう。
 だいたい、このような解釈で間違ってはいないように思います。
 しかし、何かこう釈然としないというか、よくわからない点や辻褄が合わないように思われる点もあります。
 (1)クリタはどうなった?:「フラッタ・リンツ・ライフ」の最後でクリタは大怪我を負ったようでした。「クレィドゥ・ザ・スカイ」の中盤でソマナカは、クリタがクサナギに殺されたという事実を語っていました。ということは、「フラッタ・リンツ・ライフ」から「クレィドゥ・ザ・スカイ」までの間、正確にはクサナギが病院に収容されるまでの間に、クサナギがクリタを殺す事件が発生しているということになります。この事件が本当に発生したのか、何故クサナギがクリタを殺す必要があったのかなど、謎は明かされないままです。
 (2)なぜクサナギ&フーコで逃避行?:「クレィドゥ・ザ・スカイ」の前半では僕とフーコの逃避行が描かれていました。このときの「僕」がクサナギであるとすると、クサナギとフーコが二人で逃避行していたということになります。これまでの物語でクサナギは何度かフーコに会って話をしています。しかし、ほとんど昔の記憶を失っているクサナギがフーコに連絡して助けてもらったり、連絡をもらったフーコがクサナギを助けるというような親密な間柄ではなかったはずです。フーコと共に娼館へ一旦逃げ込んだクサナギが、娼館から出る際に普通に会計の話をしているのも不自然な気がします。女性が娼館へ行くことがないとは言えませんが、これまでのクサナギが行っていたとは思えません 。
 「クレィドゥ・ザ・スカイ」の段階で既にクサナギは外観(及び性別)がカンナミに変わっていたのでしょうか。だとしても、カンナミがフーコと出会うのは「スカイ・クロラ」が初めてだったように思います。
 であるとすれば、「クレィドゥ・ザ・スカイ」は「スカイ・クロラ」より時系列的に後の物語であると考えればどうでしょう?「スカイ・クロラ」の最後でカンナミが病院らしき場所へ収容されていたので、「クレィドゥ・ザ・スカイ」の最初に無理なく繋がるように思うのですが。ただし「クレィドゥ・ザ・スカイ」のエピローグでソマナカがカンナミを新人パイロットと言っている点で矛盾は生じるのですが…。
 (3)クサナギの子供はどうなった?:クサナギの子供がミズキであろうということになっていますが、これはトキノが語った噂話であり、真偽は不明です。トキノの噂話以外では、ミズキはクサナギの妹と言うことになっています。「ナ・バ・テア」か「ダウン・ツ・ヘヴン」で僕(クサナギ)は母親以外に家族はいないというようなことを語っていたように思いますが、「スカイ・クロラ」で僕(カンナミ)は妹が死んだということを語っていたように思います。
 もしミズキがクサナギの子供であるなら、ティーチャが引き取ったはずの子供がどのような経緯でクサナギの妹として育てられているのかは気になるところです。そう言えば、ティーチャはその後どうなったのでしょうか。黒猫マーキングの飛行機は敵として何度も登場していますが、ティーチャ自身は「ダウン・ツ・ヘヴン」以降の登場がありません。黒猫マーキングの飛行機は必ずしもティーチャが乗っているとは限りませんからね。
 ミズキがクサナギの子供ではないのであれば、子供のその後が気になります。一時はカンナミがクサナギの子ともではないかという疑いも持っていました。
 (4)「クレィドゥ・ザ・スカイ」のエピローグでソマナカは何と言おうとした?:カンナミに対してソマナカは、「僕はあなたの…」と言いかけてやめています。ソマナカはクサナギの何だったのか?あなたのことが好きでした、程度のことかもしれませんが。まさか、ソマナカがクサナギの子供だったということは年齢的に見てもあり得なさそうです。もしかしたら、ソマナカはクサナギの父親だったということはあるかもしれないと疑っています。
 以上、スカイ・クロラシリーズの疑問点などを並べてみました。このシリーズには、もう一冊「スカイ・イクリプス」という短編集があります。もしかしたら、この短編集に上記の謎を解く手がかりがあるかもしれません。




森博嗣 「フラッタ・リンツ・ライフ」

 森博嗣さんの「フラッタ・リンツ・ライフ」は、スカイ・クロラシリーズの第4弾に相当し、2006年に単行本が発売されています。
 「フラッタ・リンツ・ライフ」もこれまでの作品と同様に、主人公「僕」の視点で物語が描かれています。ただし「フラッタ・リンツ・ライフ」の「僕」は、これまでの「僕」とは異なる人物です。「スカイ・クロラ」の「僕」は、カンナミ・ユーヒチでした。「ナ・バ・テア」及び「ダウン・ツ・ヘヴン」の「僕」は、クサナギ・スイトでした。今回の「フラッタ・リンツ・ライフ」の「僕」は、クリタ・ジンロウです。
 クリタは、「スカイ・クロラ」では既に死亡しており、クサナギに殺されたという噂もありました。「ナ・バ・テア」では基地に配属された新たなパイロットとしてクリタがほぼ名前だけの登場を果たしていましたが、「フラッタ・リンツ・ライフ」には名前すら出てきませんでした。「スカイ・クロラ」では、カンナミがクリタの生まれ変わり?であることを疑わせるような部分もありましたが、「ダウン・ツ・ヘヴン」で既にカンナミは登場しており、このあたりは謎のままです。
 「フラッタ・リンツ・ライフ」は、クサナギがクリタの上司になっており、クサナギが出世していることから、時系列的に「ダウン・ツ・ヘヴン」の後の物語と考えて間違いなさそうです。一番の注目すべきポイントは、クリタの生死でしょうか。
 それでは以下、「フラッタ・リンツ・ライフ」の物語です。ネタバレ注意です。

<プロローグ>
 フーコのところへ行った帰り、僕は、一人の女性に会いに行きます。この女性:サガラ・アオイは、戦死した同僚:ホンジョーの家族です。この女性には、クサナギもたまに会いに来ているようです。
 基地へ戻った僕は、この女性の家に寄り道したことを、クサナギに問い質されます。

<エピソード1>
 トキノと出撃した僕は、敵機と遭遇して戦闘を開始しようとしたとき、トキノから撤退の指示が出ます。基地へ戻った僕は、敵機の中に猫のマークを付けた飛行機がおり、この敵とは戦わないようクサナギから指示されていたことをトキノから聞かされます。報告を受けたクサナギは、嬉しそうな表情でした。
 次の日、僕はクサナギ及びトキノと共に出撃します。猫マークの敵は現れませんが、僕達は三機の敵を撃墜して帰還します。帰還後、僕の元にクサナギがやってきて、サガラ・アオイについて話をします。クサナギは僕に、できればサガラに会わないで欲しいと頼みます。その後、フーコの所へ行った僕は、クサナギが一度だけここへ来たことがあるとフーコから聞かされます。
 翌日、出撃したマツナガとアダチが帰ってきません。その日に僕は、クサナギが女性の上司と言い争っているのを見かけます。
 数日後、僕は町外れのカフェでソマナカという新聞記者に出会います。ソマナカは、サガラ・アオイがクサナギの幼なじみであることを教えてくれます。

<エピソード2>
 僕はトキノと出撃し、帰路で自機が故障し、基地へ辿り着けずに不時着します。不時着した場所は、サガラの家の近くでした。僕は、小型トラックに乗って偶然に通りかかったサガラと会います。サガラは、自分がキルドレに関する研究をしている研究者であることを僕に話します。
 基地から迎えが来て基地へ戻った僕は、クサナギにサガラと合ったことを話します。その後、僕は、トキノに誘われてフーコの所へ行きます。僕は、フーコに頼まれて、海までドライブへ行きます。
 一週間ほど後、基地で地域住民を招待したイベントが開催されます。サガラは、このイベントに紛れて僕に会いに来ます。サガラは、自分が持つ情報をある組織が隠蔽しようとしており、それを知る自分を捕らえようとしていることを話し、僕に協力を求めます。サガラが基地まで乗って来たトラックの周囲では、黒い服の男達が見張っています。僕は、笹倉のバイクを借り、サガラを連れて基地から脱出します。
 基地を出てしばらく走った後、僕とサガラはカフェで一休みします。サガラは、キルドレを普通の人間に戻す方法を発見したと話し、クサナギが実証例だと言います。
 その後、僕はサガラを駅マディ送り、そこで別れます。寒さでバイクの運転をこれ以上できそうにない僕は、フーコに迎えに来てもらいます。

<エピソード3>
 半月ほど後、甲斐にサガラについて問い質されますが、しらを切ります。クサナギは僕の嘘に気付いているようです。僕を解放した甲斐は、クサナギが外出するから護衛するようにと僕に指示を出します。
 クサナギと僕は、クサナギの車で、クサナギの母親の葬式へ向かいます。道中、クサナギは、自分がキルドレではなくなり、普通の人間になったことを僕に話します。クサナギが妊娠したことが原因のようです。クサナギは、飛行機に乗れなくなることを悲しみます。
 クサナギが葬式に出ている間、僕が駐車場で待機していると、クサナギの妹のクサナギ・ミズキがやってきます。しばらくミズキと話していると、僕は、葬式場の入口付近を銃で狙う人物を発見します。この人物はサガラでした。近づいた僕は、サガラに撃たれてしまいます。
 僕は病院へ運ばれますが、大した怪我ではなく、次の日には退院できそうです。サガラは警察に捕まったと聞かされます。僕は配置替えとなり、転属先が決まるまで療養施設に入ることになります。

<エピソード4>
 一週間ほどで療養施設から出た僕は、次に研究所2配属され、開発中の機器の試験をする役割が与えられます。しかし外出はできず、常に監視されているようです。穏やかな日々が続き、僕はこの生活に慣れてきますが、心の何処かが警鐘を鳴らしています。
 ある日、情報部のコシヤマという男がやってきて、僕に移動を命じます。移動先には多くのパイロットが集められています。大規模な戦闘が行われるようです。
 次の日、出撃した僕は、黒猫マークの敵機に遭遇します。僕のチームの三機はこの敵に撃墜されてしまいます。僕は、撃墜は免れますが、被弾してしまいます。僕は足を怪我し、自機は不調になります。そして基地へ戻る途中、燃料が尽きて不時着します。裏返しで不時着した自機のコクピットから僕は何とか這い出し、気を失います。

<エピローグ>
 三日後、僕は病院のベッドで目を覚まします。ベッドから起き上がれないほどの重症のようです。

 以上が「フラッタ・リンツ・ライフ」の物語です。
 これまでの物語と少し雰囲気が異なる印象を受けた物語でした。飛行機色が薄く、ミステリーの雰囲気が強かったです。サガラ・アオイとキルドレの秘密に関するエピソードの印象が強いからだと思います。クサナギが出産したときにそばにいた医師の名前がサガラでした。恐らくアオイは、このサガラ医師の娘ではあると思わます。アオイは、警察に捕まってしまったようですが、今後の登場はあるのでしょうか?それにしても、クサナギがキルドレでなくなっていたという事実は衝撃的でした。
 今回の主人公のクリタは、確かクサナギに銃で撃たれて殺されたという噂でしたが、今巻ではそのような展開はありませんでした。その代わりにクリタはサガラに撃たれていましたが、この事実が歪められてクサナギが撃ったという噂になっているのでしょうか?それとも、今後の物語でクサナギがクリタを撃つのでしょうか?
 今巻にはカンナミが登場しませんでしたが、カンナミが今後どのように物語に現れるのか気になる所です。
 スカイ・クロラシリーズは、次の「クレィドゥ・ザ・スカイ」で長編は最後なので、何らかの物語の結末が描かれると思われます。「ナ・バ・テア」から「フラッタ・リンツ・ライフ」までの物語と、「スカイ・クロラ」の物語とがどのように繋がるのか、楽しみです。