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太田垣康男 「機動戦士ガンダムサンダーボルト」 第16巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第16巻は、2020年9月に発売されています。
 前巻は、地上編のエピローグ的な内容で、クローディアを殺してしまったショックからイオが立ち直り、打倒サイコザクに向けて歩き始めるという物語でした。敵スパイだったコーネリアスが死亡し、双子ニュータイプの1人イースがイオの身代わりとなって死亡しました。モニカ大佐がアナハイムのお偉いさんと「パーフェクトガンダム」について話すなどという、気になる伏線もありました。
 そしてこの第16巻の表紙には、見たことのないガンダムが描かれています。これは一体・・・。
 それでは以下、「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第16巻の物語です。ネタバレ注意です。

 地球連邦軍の宇宙要塞ルナツーでは、新たなモビルスーツの開発が進められており、様々な試作機が作られていました。ルナツー司令官のボーマン提督は、試作機の視察で大忙しです。試作機の流行はガンダム顔で、先月までガンキャノンIIの発展機として開発されていたモビルスーツが、いつの間にかガンダム顔に変更され、「ブルG」と名付けられていたりします。他にも「ロッソ・ガンダム」、「ガンマ・ガンダム」、「ガンダム翔」等々の試作機が競って制作されていました。
 ルナツーへ入港する多くの貨物船の1つに、貨物船アーケロン号がありました。アーケロン号には、連邦軍人に変装したダリル、ガルシア、ジャニス、チャウ・ミン及びガレ中佐の5人が乗っていました。ダリル達は試作モビルスーツの搬入という名目でルナツーへの侵入を果たします。ルナツーに入ったアーケロン号から、積み荷の試作モビルスーツが
ダリルの操縦で運び出されます。アーケロン号の貨物室から出てきた試作モビルスーツは、RX-78ガンダムと似た外観を持つ軽装のガンダムタイプのモビルスーツでした。管制官からモビルスーツの名前を問われたダリルは、「パーフェクト・ガンダム」と答えます。ニュータイプとして目覚めつつあるダリルは、ルナツー内にある何かを感じ取り、管制官の誘導を無視して何かを感じる方向へパーフェクト・ガンダムを向け、隔壁を破壊して奥へと進みます。ルナツーのモビルスーツ部隊に、パーフェクト・ガンダムの撃墜命令が与えられます。
 少し前。地球でタール火山基地を脱出したダリル達は、ガレ中佐の部隊と手を組み、ジオン残党軍が支配している基地からシャトルを奪って宇宙へ上がりました。仲間達と合流するためには戦力が必要であり、ダリル達は、戦死したクライバー将軍が使っていた暗礁空域の基地へ向かいます。グラバー将軍は、サンダーボルト宙域で大破したフルアーマー・ガンダムの残骸を手に入れて、この基地に保管していました。ダリルは、地球から持ってきた陸戦仕様のサイコザクを、フルアーマー・ガンダムの装備を利用して宇宙仕様に換装する事を考えます。こうしてサイコザクのフレームにガンダムの装甲を装着したパーフェクト・ガンダムが誕生しました。そしてダリルは、ルナツーの奥から自分を呼ぶ声を聞きました。
 ルナツーの司令部では、パーフェクト・ガンダムの操縦者がダリル・ローレンツである事が判明し、動揺が走ります。パーフェクト・ガンダムの撃墜命令を受けて出撃したジム及びガンキャノン等のモビルスーツ部隊は、パーフェクト・ガンダムに一瞬で壊滅されます。
 ルナツーにいたサム・シェパード中尉に出撃命令が出ます。サム中尉は、Gブルのパイロットです。サム中尉は、パーフェクト・ガンダムを撃墜するため、Gブルで出撃します。ルナツーの各所を視察していたボーマン提督にも、ダリル・ローレンツがガンダムでルナツーに侵入したとの連絡が入ります。
 その頃、アーケロン号ではガレ中佐がルナツーのシステムに侵入し、ルナツーに保管されているジオンのある兵器を起動します。
 ダリルのパーフェクト・ガンダムは、ルナツーのモビルスーツ部隊を次々と撃破していきます。そこへ、サム中尉のブルGが2機のガンキャノンを従えて現れます。Gブルは、特殊ポリマーを散布してモビルスーツの機動性を低下させる特殊兵器を発射し、パーフェクト・ガンダムは機動性が低下してしまいます。軽装でスピード重視のパーフェクト・ガンダムは機動性の低下で不利になり、重装備でパワー型のGブルの力押しの攻撃に苦しみます。そんな中、ダリルは目的の物が隠されている格納庫を発見し、その中へ突入します。Gブル及びガンキャノンが格納庫ごと破壊しようと一斉攻撃します。崩壊した格納庫から現れたのは、ジオン軍のニュータイプ専用モビルアーマー「ブラウ・ブロ」とドッキングしたパーフェクト・ガンダムでした。
 大型のモビルアーマーの出現を知らされたボーマン提督は、ルナツー内での火器の無制限使用を許可し、敵殲滅を命じます。Gブルを中心に集まったルナツーのモビルスーツ部隊は、ボーマン提督の命令を受け、ブラウ・ブロに対して一斉攻撃を行います。しかしブラウ・ブロに搭載されたIフィールドがビーム攻撃を全て逸らします。ブラウ・ブロは高出力のメガ粒子砲を発射してルナツーの外にまで通じる大穴を隔壁に開けます。この大穴を通ってルナツーの外へ出たブラウ・ブロは、ルナツー周辺の艦隊に攻撃を仕掛け、次々と戦艦を沈めていきます。
 ルナツー内にいた貨物船アーケロン号も、ジャニスのナビゲート、チャウ・ミンの操縦でルナツーから脱出し、ダリルと合流します。アーケロン号は貨物船の擬装をパージして、本来の高速艇の姿に戻り、ブラウ・ブロのIフィールド圏内に入ります。ルナツーの全艦隊がブラウ・ブロへの集中攻撃を行いますが、ダリルはブラウ・ブロのオールレンジ攻撃とIフィールドとでこれを凌ぎきります。ブラウ・ブロ及び高速艇は、ルナツー圏内から去って行きます。
 ダリル・ローレンツがルナツーからブラウ・ブロを盗み出して姿を消したという情報が、モニカ大佐の元に入ります。モニカ大佐は、アナハイム経由で既に情報を入手済みで、ダリルが乗っていたパーフェクト・ガンダムがサイコザクの素体にガンダムの装甲を付けたものである事に気付いていました。モニカ大佐及びイオを含む元スパルタンのメンバーは既に宇宙へ上がっており、ダリル達に対抗するモビルスーツを準備し、イオがテスト飛行を行っていました。イオが乗るモビルスーツは、ジオング。連邦軍が鹵獲したジオングを改修したものでした。このジオングのコクピットは2人乗りで、イオと、双子ニュータイプの生き残りであるリリーが乗っていました。

 以上が、太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第16巻の物語です。
 多くの人の予想の遥か上を行く驚きの内容だったのではないでしょうか。イオがパーフェクト・ガンダムに乗り、ダリルのサイコザク最終決戦仕様と戦うのだと思っていました。ほとんどの人がそうなのでは?ダリルがパーフェクト・ガンダム、イオがジオングで最終決戦になるとは誰も予想出来なかった事でしょう。太田垣さんスゲーわ。
 ダリルのパーフェクト・ガンダムは、アムロが乗った最初のガンダムとほぼ同じ外観でした。中身がサイコザクなので、動力パイプが剥き出しなのはご愛嬌。パーフェクト・ガンダムと言うと、プラモ狂四郎のゴテゴテしたやつを思い浮かべますが、太田垣さんのパーフェクトは機動性を極限まで高めたガンダムなのですね。ゴテゴテしたパーフェクト・ガンダムを登場させても、最初のフルアーマー・ガンダムとの差別化が難しいという理由からかもしれませんが。
 ダリルのパーフェクト・ガンダムがアムロのガンダムに似ているためか、この巻には最初のガンダムで見たことあるようなポーズをダリルのガンダムが取ったり、最初のガンダムで聞いたようなセリフをダリルや他の登場人物達が発したりと、遊び心も満載でした。思わずニヤリとする箇所です。
 そして、ダリルのパーフェクト・ガンダムがブラウ・ブロと合体するという、これまた予想外の組み合わせ。ガンダムが剥き出しで真正面にいるのは防御力的に問題ありそうな気もしますが。フリーダム・ガンダム&ミーティアや、ガンダムGP03デンドロビウムが思い浮かぶ構成でした。
 恐らく次巻はイオ側の物語になるでしょう。ジオングのコクピットは頭部にあるのかな?もしそうなら、最終決戦ではサンダーボルト版のラストシューティングのシーンが見られるかもしれません。
 所で、この第16巻には、通常版と、設定資料集が付いた限定版とが存在します。限定版は少しお高いですが、資料集にはパーフェクト・ガンダムの没案なども紹介されており、必見の内容です。買うなら是非とも限定版をオススメします。

 


太田垣康男 「機動戦士ガンダム サンダーボルト外伝」 第4巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」の第4巻は、2020年7月に発売されました。
 前巻の外伝3巻は、一冊丸々で砂鼠ショーンを主人公とする物語でした。個人的にはややイマイチだったので、今巻がショーンの続きだったら嫌だなと心配しましたが、今巻は全く別の物語でした。一話完結の短編が2つと、6話分の中編とが収録されています。
 それでは、「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」第4巻に収録された各話の物語です。ネタバレ注意です。

<戦闘糧食>
 地球連邦軍の戦艦には、回転式ドラムによる人工重力モジュールが設けられており、そこに調理場がありました。調理場では多くの調理師達が働いており、チーフのウェンディは弁当容器の回収に厳しい女性でした。
 ある時、調理中にジオン車との戦闘が始まり、調理場の火を使う事が出来なくなりますが、ウェンディ達は余熱とレンジとでランチ弁当を作り続けます。ウェンディ達が作ったいなり寿司弁当は、出撃するパイロット達に配られ、パイロット達は弁当を持ってモビルスーツで出撃していきます。
 弁当を作り続けるウェンディ達の元に、僚艦からも弁当の注文が入ります。僚艦では戦闘で数名の調理師が負傷し、食事の用意が遅れていました。缶詰めで我慢してもらおうと提案する同僚に対し、ウェンディは、最後の食事になるかもしれない兵士こそ美味しい御飯を食べて貰わなければいけないといい、注文を引き受けます。
 激しい戦闘は続き、兵士達はいなり寿司弁当を食べて戦闘を乗り越えます。ウェンディの戦闘糧食は、他の艦でも有名になっており、真似する所も増えていました。
 戦闘は終了し、調理場には弁当容器が返却されてきます。今回の戦闘で容器の紛失は0、これは戦死者が0だった事を意味します。ウェンディは、安堵して、自分のいなり寿司弁当を食べます。

<The color of memories>
 サンダーボルト宙域は、ジオン軍のスナイパー部隊リビング・デッド師団が制圧しています。スナイパー部隊は3人一組で48時間交代の見張りを行っています。俺は、マーサ及びエミリオと共にサンダーボルト宙域で見張りに就いていました。敵が侵入したら長距離ビーム砲ビッグ・ガンで狙撃する簡単な任務で、退屈や睡魔との戦いでもある任務です。
 デブリ帯が接近したため、マーサの機体が狙撃位置を変更しようとしたとき、バーニアの噴射光で位置を把握した敵がマーサ機を狙撃し、マーサ機は爆発します。エミリオが反撃しますが、狙いを外し、射点を知られた事で逆に狙撃され、エミリオ機も爆発します。
 1人残った俺は敵の位置を把握できませんでしたが、敵も俺の位置を発見できていないようでした。膠着状態が続きます。サンダーボルト宙域に雷が発生し、俺は敵のジムスナイパーを発見します。俺は、敵を狙撃して倒します。もし敵に仲間がいれば、次は俺の射点が狙われる所ですが、敵は一機だけでした。俺は、交代までの20時間を1人で待ちます。

<男と女>
 オデッサ作戦に連邦軍が勝利し、連邦軍の主力は戦車からモビルスーツへと移っています。オデッサ地方の連邦軍前線基地に、政府高官のアーネスト・ケリー副長官が、妻のサマンサを連れて視察にやってきます。この基地には、サマンサの元夫であり、ガンタンクのパイロットであるクリード大尉がいました。
 ケリー副長官を乗せた政府専用機がジオン軍のゲリラ攻撃を受けて墜落します。ケリー副長官の生存は確認されたため、ケリー副長官を救出するための部隊がミデア輸送機で基地から飛び立ちます。この部隊には、クリード大尉のガンタンクも含まれています。ガンタンクには、操縦担当と砲撃担当との2人のパイロットが乗り込みます。クリード大尉の相棒はオデッサ作戦で戦死しており、新しい相棒としてソニア中尉が砲撃手となりました。
 墜落現場の上空へやってきたミデア輸送機は、地上からの砲撃を受けます。ミデア輸送機のコンテナに固定されているガンタンクは身動きできません。クリード大尉は、ソニア中尉に床を撃って破壊するよう命じます。ガンタンクは、床を打ち抜いて空中へ飛び出し、その直後にミデア輸送機は敵のミサイル攻撃で爆発します。何とかガンタンクは着地し、要人救出へ向かいます。
 過去。サマンサはクリードとの子供を妊娠しましたが、流産しました。
 現在。墜落した政府専用機の周辺では、まだ戦闘が続いていました。ケリー副長官及びサマンサは生きていましたが、ケリー副長官は撃たれて怪我をしていました。周辺の敵を排除したガンタンクが救援に現れ、2人はガンタンクに乗り移ります。味方の他の部隊は全滅していました。ガンタンクは、森の中に逃げ込み、身を隠します。
 サマンサが応急処置を行いますが、ケリー副長官は重傷でした。クリード大尉は、日中は森に身を隠して援軍を待ち、援軍が来なければ夜に移動して味方の基地を目指す事を提案します。しかしサマンサは、夜までケリー副長官が保たないと言い、危険でも昼間に味方の基地へ移動する事を頼みます。クリード大尉は、サマンサの頼みを聞き入れます。
 ジオン軍のルッグン偵察機が周期的に上空を偵察しており、クリード大尉は偵察機が姿を消した直後にガンタンクを始動させます。クリード大尉は、ソニア中尉にガンタンクを降りて救援を待つよう指示しますが、ソニア中尉もガンタンクに乗り込みます。ガンタンクは、全速力で味方基地への最短ルートの山越を開始します。
 クリード大尉は、サマンサが流産した後、酒とギャンブルに溺れ、バーで喧嘩して刑務所に8ヶ月入り、出所して直ぐに軍隊へ入った事をソニア中尉に話します。クリード及びサマンサは離婚し、その頃からサマンサはケリーの選挙事務所で働き始め、後に結婚する事になります。
 ガンタンクを追撃して3機のドムが攻撃してきます。ガンタンクは、上半身を後方へ旋回させて、全速力で逃げつつドムを攻撃します。しかし敵は一機のドムを待ち伏せさせており、ガンタンクの前方から斬りかかってきます。このときガンタンクは上半身を後方へ向けており、このドムを攻撃する事が出来ません。クリード大尉は、ガンタンクの上半身を分離させてドムの攻撃をかわし、更に上半身からソニア中尉が乗るコアファイターを分離させます。コアファイターは、待ち伏せしていたドムを撃破します。そして、味方基地からの援軍が到着し、追撃してきたドムは倒されます。ガンタンクの下半身に乗っていたケリー副長官及びサマンサは無事に保護されます。クリード大尉も負傷していましたが、無事でした。ソニア中尉はタンク乗りを続けることを決め、クリード大尉はソニア中尉を相棒として認めます。
 その後、しばらくして、パリ西部でテロが発生し、サマンサがテロに巻き込まれて死亡します。クリード大尉及びソニア中尉と、ケリー副長官とは、サマンサの葬儀で顔を合わせます。ケリー副長官は、この時点で既に退役していたクリードに、新造戦艦スパルタンの任務に参加する事を要請します。クリード大尉はガンタンク乗りとしてスパルタンの任務に参加する事を決め、ソニア中尉もクリード大尉の相棒としてスパルタンの任務に参加する事を決めます。

 以上が、太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」第4巻に収録された3つの物語です。
 とれも面白かったです。その中でも個人的に一番気に入ったのは、最初の「戦闘糧食」です。これまでのガンダム作品で、戦艦内で食事をしている場面はありましたが、食事を作っている場面はあまり見た記憶がありません。弁当容器の回収にこだわる理由が明かされる場面は少しうるっと来てしまいました。このネタで1つのガンダム作品が作れそうに思えました。
 「男と女」は、ガンタンク対ドムの戦闘シーンが熱かったです。サンダーボルト版のガンタンクは、本編にも登場していますが、モビルスーツてはなくほぼ戦車。まさかコアファイターが内蔵されているとは思いませんでした。ただ、ガンタンクは2人乗りなのに、コアファイターは1人乗り。脱出機構としては問題あるような気がします。
 やはりサンダーボルトは本編も外伝も面白いです。まだまだ続いて欲しいですね。


太田垣康男 「機動戦士ガンダムサンダーボルト」 第15巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第15巻は、2020年3月に発売されています。
 前巻は、タール火山基地での戦闘のクライマックスでした。イオのアトラスガンダムがサイコザクを運んでいたザクタンクを破壊し、イオは乗っていたクローディアを殺してしまいました。完成したサイコザクを得たダリルは戦艦スバルタンを沈め、艦長を含む多くの連邦軍兵士達が死亡しています。サイコザクを積んだシャトルの打ち上げは成功し、ほぼ南洋同盟の勝利で幕を閉じました。
 大きな戦闘の後なので、今巻は次の戦闘までの繋ぎとなる物語です。
 それでは以下、「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第15巻の物語です。ネタバレ注意です。

 宇宙では、打ち上げられた32機のサイコザクを、南洋同盟の部隊が回収していました。回収部隊は、サイコザクのパイロットとなる義手義足の兵士達、ビビ・ベンソン、ボリス、ハンク、マシュー、フィッシャー等で構成されたモビルスーツ部隊が守っていました。そこへ、連邦軍の戦艦3隻及びモビルスーツ12機が現れ、ビビ達は戦闘を開始します。
 タール火山から少し離れたジャングルに、ゴッグ及びズゴック等のモビルスーツと、これに守られた潜水艦とが上陸します。潜水艦には南洋同盟の生き残りの兵士達が大勢収容されていました。これらの兵士達は、タール火山へと引き返したカウフマン少佐が救出した兵士達で、ダリルの仲間のビリーや整備士も含まれています。兵士達は、ジャングルの中にある南洋同盟の備蓄用格納庫で、マゼラアタックを発見し、これに乗り換えます。カウフマン少佐は、ゴッグ及びズゴック等のモビルスーツを爆破し、マゼラアタックで陸路を進みます。
 ダリルのサイコザクは、一台のドダイに乗って、連邦軍の追撃部隊と戦っていました。そこへ、ガウ攻撃空母が現れて連邦軍の追撃部隊を殲滅します。ガウ攻撃空母は、南洋同盟は保有しておらず、ジオン残党軍のものでした。しかしガウ攻撃空母には、ダリルの昔の仲間、ペトロ・ガルシア及びジャニスが乗っており、敵対する意志はありませんでした。ガウ攻撃空母に収容されたダリルは、この空母の指揮官であるガレ中佐に対面します。ガレ中佐は、既にジオン軍を抜けており、宇宙へ戻るために協力する事を求めます。ダリルは、ガレ中佐達と協力して宇宙へ上がる事を決めます。
 レヴァン・フウ僧正、カーラ博士及びセクストン博士達は、無事に宇宙へと脱出していました。レヴァン・フウ僧正は、カーラに遠話で話しかけます。レヴァン・フウ僧正は、アナハイム・エレクトロニクス社がニュータイプ実験のために生み出したクローン人間でした。しかし、脳に腫瘍が見つかり、余命1年の宣告を受け、南洋宗の僧侶として最後を迎える事を望みました。掃海艇のクルーとして戦死者の慰霊に没頭したレヴァン・フウ僧正は、偶然に回収したエルメスのビットからサイコミュの技術を取得し、セカストン博士が持ち出したリユース・P・デバイスを手に入れました。レヴァン・フウ僧正は、頭に埋め込んだナノマシンをリユース・P・デバイス及びサイコミュの技術と、自身のニュータイプ能力とでコントロールする事で延命に成功しました。ソーラ・レイでアナハイムを攻撃する作戦では、奪ったソーラ・レイを巨大モビルアーマーで移動させる必要があります。レヴァン・フウ僧正は、このモビルアーマーの制御を行います。レヴァン・フウ僧正は、自分の脳治療をカーラに引き継いで欲しいと頼みます。そしてレヴァン・フウ僧正達を乗せた宇宙鑑は、小惑星帯に作られた基地へ到着します。そこには、ビグ・ザムがありました。
 タール火山の周辺の海では、連邦軍の船が負傷兵達の救出を行っていました。生き残った兵士達の中から、サイコ・ザクを追撃する部隊への志願者が募られます。ビアンカ達は追撃部隊に参加します。イオは、PTSDと判断されて医療テントに収容されていました。イオは、ベッドの上に座り込んで身動き一つしない状態でした。
 タール火山での指揮を取っていたモニカ・ハンフリー大佐は、指揮権を剥奪され更迭される事になります。連邦軍は、南洋同盟を脅威と認め、スパルタンが単艦で行ってきた「サンダーボルト作戦」を全軍で引き継ぐ事を決めていました。
 兵士達でごった返す船上で、アリシアはコーネリアスと再会します。コーネリアスは、イオを探していました。アリシアは、イオの居場所を教えますが、コーネリアスの手にある刺青を見てしまいます。コーネリアスは、アリシアを突き飛ばし、姿を消します。
 モニカ大佐は、アナハイム・エレクトロニクス社の執行役員であるアンディー・ウェリントンと通信します。アンディーは、更迭の撤回と、追撃部隊への増援を約束します。モニカ大佐及びアンディーは、リユース・P・デバイスを使ったパーフェクトガンダムの実現を目指していました。
 イオの元へやってきたコーネリアスは、全く反応を示さないイオをベッドに寝かせ、イオの点滴を毒薬に交換します。そしてコーネリアスは、イオに語ります。コーネリアスは、サンダーボルト宙域で地獄を経験して南洋同盟に入りました。レヴァン・フウ僧正はダリルを後継者と考えており、ダリルをニュータイプとして覚醒させるために、イオを万全の態勢でダリルとの戦いに送り出す事がコーネリアスの使命でした。コーネリアスは、レヴァン・フウ僧正がソーラ・レイを奪取してアナハイム・エレクトロニクス社を攻撃する計画を進めている事を話します。毒が回り始めてイオが苦しみ出したとき、コーネリアスは自分も後を追うつもりだと銃を取り出してベッド脇のテーブルに置きます。
 そのとき、医療テントの中にニュータイプの双子リリー及びイースが現れます。リリーは、レヴァン・フウが戦争で心に傷を負った人間を利用してアナハイム・エレクトロニクス社への復讐を果たそうとしているだけだと説きます。イースの様子がおかしくなり、イースは血を流して倒れます。イースの様子は、少し前に毒が回って死にかけているイオの様子に酷似していました。そしてコーネリアスがイオの方を見ると、イオはコーネリアスが置いた銃を手にし、コーネリアスへ銃口を向けていました。
 アリシアからコーネリアスが南洋同盟のスパイの可能性があることを聞かされたビアンカ達は、イオのいる医療テントに駆け付け、コーネリアスを囲んで銃を向けます。医療テントの中では、イースが血を流して倒れ、イオがコーネリアスに銃を向けていました。コーネリアスはイオを見つめて微笑み、イオは引き金を引きます。こうして、学生時代からの仲間だったイオ、クローディア及びコーネリアスの3人は、イオ1人だけが生き残る事になりました。
 イオが助かったのは、イースが身代わりになったおかげでした。イオは、イースの代わりにリリーの兄妹となって、リリーを支える事を約束します。コーネリアスの話しからレヴァン・フウ僧正の目的が判明したため、追撃部隊はこれを阻止すべく、宇宙へ上がる事になります。追撃部隊は、スパルタンの生き残り87人で構成され、死亡したビンセント・パイク艦長に代わって、パイク艦長の義理の妹でもあるメグ・リーム曹長が司令官を勤める事になります。追撃部隊の兵士達は、スパルタンのエンブレムに敬礼して、サイコ・ザクを倒す事を誓います。

 以上が、太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第15巻の物語です。
 地上編のエピローグという雰囲気の巻でした。まぁ、面白かった・・・のですが・・・。イオの毒死をイースが身代わりになって助けるという展開、ここだけは何だかなー。納得しずらいというか、モヤモヤが残るというか。いくらなんでも、ニュータイプ能力を拡大解釈し過ぎに思えました。おかげでイオの復活が思いの外に早まったので、宇宙編のスタートが早まったかもと前向きに考える事にします。
 モニカ大佐とアナハイム・エレクトロニクス社のお偉いさんとが、「パーフェクトガンダム」なんて単語をボソボソ話してました。パーフェクトガンダム!宇宙編に登場したら嬉しいですね。太田垣版のパーフェクトガンダムがどんなのか、非常に楽しみです。プレミアムバンダイ限定でいいので、プラモデル化も期待します。

 

太田垣康男 「機動戦士ガンダム サンダーボルト外伝」 第3巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」の第3巻は、2019年10月に発売されました。第2巻が2017年5月だったので、約2年ぶりの新巻です。正直、もう続きは出ないと思ってたので、嬉しいです。
 これまでの外伝1、2巻は、一話完結の短編や、数話の中編を複数収録して一冊が構成されていました。これに対して外伝3巻は、一冊で1つの物語です。正伝の第5巻の最後に収録されていた、砂鼠ショーンを主人公とする物語です。
 それでは、「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」第3巻に収録された各話の物語です。ネタバレ注意です。

<第15話~第22話 砂漠の掟>
 砂漠に、何者かに襲われて破壊されたモビルスーツ達の残骸が横たわっています。傷を負って死にかけている男に、1人の女性が近付き、誰にやられたかと問います。男は「ロレンツォ・ファーミリア」と答え、この女性ファルコン・モニカに積み荷の奪還を全財産で依頼して息絶えます。
 スペースコロニーが落下した地点に水が湧き、砂漠のオアシス「龍骨街」として栄えていました。ここは、食糧からモビルスーツまで何でも取引される闇マーケットとして栄えています。龍骨街でオークションが開催され、ロレンツォ・ファーミリアはオークションに「ビッグ・ガン」を出品していました。ビッグ・ガンは、サンダーボルト宙域で使用されていた長距離狙撃のためのモビルスーツ用の巨大なビーム兵器です。これを知ったショーンは、ビッグ・ガンが欲しくてたまらなくなります。ショーンは、サンダーボルト宙域の生き残りで、ダリルと共に戦った経験がありました。
 龍骨街の付近までやってきたモニカは、ロレンツォ・ファーミリアが奪った積み荷ビッグ・ガンを見つけ、更にショーンとショーンが世話になっているブッチ・ブラザーズが龍骨街に来ている事を知ります。ブッチ・ブラザーズは、親分のブッチと、子分のボウゴ及びミントの3人組で、龍骨街に食料品等を売りにきていました。ショーンはブッチ・ブラザーズの用心棒をしています。ショーンは、ブッチ・ブラザーズにビッグ・ガンを買う金を貸して欲しいと頼みますが、相手にされません。
 オークションの目玉として、ビッグ・ガンの試射が行われます。しかし試射を行うパイロットの腕が悪く、ビッグ・ガンの威力を見せる所か、ビッグ・ガンは笑い物になってしまいます。この様子を見ていたショーンは、自身のグフに乗り込むと、ビッグ・ガンの試射を行っていたドムを蹴り飛ばし、自らビッグ・ガンの試射を行おうとします。観客達はショーンを応援し、ロレンツォ・ファーミリアの首領であるロレンツォは、ショーンに試射を行うチャンスを与えます。
 モニカは、陸戦型ガンダムを改造したガンダム・バウンサーで遠くからこの様子を見ていました。ショーンはビッグ・ガンを発射し、ビッグ・ガンから強力なビームが放たれます。モニカは、ビッグ・ガンの足元の地面を狙撃し、発射中のビッグ・ガンを傾かせます。ビッグ・ガンのビームは砂漠に起立しているコロニーの残骸を打ち抜き、崩れ落ちたコロニーの残骸はロレンツォ・ファーミリアが本拠地として使っている陸上戦艦を押しつぶします。
 ブッチ・ブラザーズのホバートラックが駆け付け、ショーンを連れて逃げようとしますが、怒りに燃えるロレンツォのギャンと、その部下のザク及びグフ達とが襲いかかってきます。ショーンはザク及びグフ達は蹴散らしますが、ギャンの性能の高さに押されます。ショーンがピンチに陥ったとき、助けに入ったのはモニカでした。モニカのガンダム・バウンサーは、ロレンツォのギャンを打ち倒します。その後、ショーンはビッグ・ガンをコッソリと持ち逃げしようとし、更にはビッグ・ガンを狙って多くのモビルスーツが戦いに乱入しようと集まってきます。
 そこへ龍骨街を仕切るイエン老師のモビルアーマー・アッザムが登場します。誰もイエン老師に逆らう事はできません。モニカは、イエン老師の依頼で、砂漠の掟を破ってビッグ・ガンを横取りしたロレンツォ・ファーミリアを追っていました。ロレンツォは全財産を取り上げられ、ショーンはビッグ・ガンを取り上げられます。ビッグ・ガンは富豪が買い取り、イエン老師及びモニカが手間賃を差し引いた後、代金はビッグ・ガンの発見者の遺族へ渡されます。ショーン及びブッチ・ブラザーズはロレンツォ・ファーミリアの恨みを買い、ロレンツォ・ファーミリアに追われてモニカと共に砂漠へ逃げます。

 以上が、太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト外伝」の第3巻の物語です。
 全体的にコメディタッチの物語で、サクサクと読めました。全ページがカラーで、物凄く綺麗です。紙質の違いか、本の重さも少しズッシリくる感じです。これまでの外伝では、モビルスーツの登場シーンにプラモデルの写真を合成するコラボレーションが行われてきましたが、今回はこのコラボレーションはなく、太田垣さんの手描きの絵に、イラストレーターのウメグラフィックスさんが着色するというコラボレーションが行われていました。ただし、巻末にはガンダム・バウンサーなどのプラモデルの作例が紹介されています。
 カラーが綺麗とか、プラモデルの作例が見れるとか、見た目関係は満足でした。ただし、物語としては何だかイマイチ。砂漠で改造モビルスーツ集団がお宝を奪い合うという設定が、どうも私が思う宇宙世紀のガンダム観に合わないです。これがガンダムXの外伝だったなら何の違和感もありませんが・・・。
 次回は、短くてもいいので、もう少しシリアスな作品が読みたいです。


太田垣康男 「機動戦士ガンダムサンダーボルト」 第14巻

 太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第14巻は、2019年9月に発売されています。前巻が5月だったので、結構早いペースで進んでいます。前巻からの絵柄の変更が大きな要因でしょう。
 前巻では、南洋同盟のタール火山基地に対する連邦軍の攻撃が始まり、イオのアトラスガンダムは基地内部への侵入を果たし、とうとうダリルのサイコザクとの決戦が始まります。しかしダリルのサイコザクは外装が取り付けられていない未完成の状態です。クローディア及びメカニック達は完成したサイコザクをダリルに届けようと、ザクタンクでサイコザクを運び、ダリルの元へ向かっています。
 そして今巻では、とうとうイオ対ダリルの闘いがじっくりと本格的に描かれる事でしょう。
 それでは以下、「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第14巻の物語です。ネタバレ注意です。

 イオのアトラスガンダム対ダリルのサイコザクの戦いは続いています。未完成のサイコザクは、左腕が破損し、ダリルは危機に陥ります。しかし、完成したサイコザクを運ぶクローディア達のザクタンクが到着し、僧正からの心話で指示を受けたクローディアがザクタンクの砲撃でダリルを支援します。この隙にメカニック達はザクタンクを降りてダリルの元へ向かい、壊れたサイコザクからダリルを救出します。ダリルを抱えてザクタンクへ戻ろうとするメカニック達を、アトラスガンダムが阻止しようとし、イオはザクタンクが新しいサイコザクを運んできた事に気付きます。
 犠牲者を出しながらも、ダリルを抱えたメカニック達はザクタンクまでたどり着きます。クローディアは、アトラスガンダムへの砲撃を続けているザクタンクに後退を命じます。全速力で後退するザクタンクにアトラスガンダムが迫り、アトラスガンダムのビームサーベルがザクタンクのコクピットの装甲を吹き飛ばします。ザクタンクのパイロットは負傷し、ザクタンクのコクピットがむき出しの状態となります。この間にダリルは完成したサイコザクに乗り込みます。
 イオは、ザクタンクにトドメをさそうと、アトラスガンダムのビームサーベルをザクタンクへ向けます。そこで初めて、イオはザクタンクのコクピット内にクローディアがいることに気付きます。しかし、アトラスガンダムのビームサーベルはザクタンクを貫き、クローディアはビームサーベルに焼かれて死亡し、ザクタンクは爆発します。ダリルが乗り込んだサイコザクが立ち上がりますが、間に合いません。
 南洋同盟のチャウ・ミンは、ドダイに乗ったグフのコクピットでクローディアの死を感じとります。チャウ・ミンは、スパルタンと交戦していましたが、僧正からの指示でタール火山基地へ戻ります。スパルタンのパイク艦長は、基地を制圧すべく、上陸部隊の兵士達を乗せたガンペリーを出撃させます。
 イオのアトラスガンダムとダリルのサイコザクとは、クローディアの死の衝撃から立ち直れず、固まっていました。そこへ、イオの仲間であるデント及びオルフェの2機の陸戦型ガンダムが合流し、陸戦型ガンダムの手に乗るビアンカは、向き合ったまま動かないアトラスガンダム及びサイコザクに異様なものを感じます。ダリルの仲間のメカニック達はダリルに撤退を促し、我に返ったダリルはこれに従って撤退します。
 タール火山基地から、サイコザクを搭載したシャトルの打ち上げが開始されます。打ち上げられたシャトルに対してスパルタンは主砲で攻撃しようとしますが、チャウ・ミンから受け取ったドダイに乗るダリルのサイコザクがスパルタンに飛び乗り、主砲を破壊します。続けてサイコザクは、スパルタンのブリッジとエンジンとを破壊して去って行きます。艦長を含むスパルタンのブリッジにいた乗員は全滅し、スパルタンはタール火山へ向けて落下していきます。スパルタンからは生き残りの乗員達が脱出します。この隙にサイコザクを搭載したシャトルは次々と打ち上げられ、全機が宇宙への脱出に成功します。
 タール火山基地から脱出したアトラスガンダムは、ビアンカが操縦していました。イオは、愛するクローディアを自分の手で殺してしまったショックで全く使い物にならなくなっています。ビアンカ達はスパルタンに戻ろうとしますが、スパルタンが墜落していく様を目撃します。そしてスパルタンはタール火山に墜落して爆発し、大きな火柱が昇ります。

 以上が、太田垣康男さんの「機動戦士ガンダムサンダーボルト」第14巻の物語です。
 怒涛の展開でした。まさかこんな形で決着がつくとは思ってもみませんでした。アムロとララァ、ハサウェイとクェスのように、愛する女性を自分の手で殺してしまう、ガンダムシリーズでは避けて通れない展開です。イオはニュータイプではないので、殺してしまう直前までまさかクローディアがザクタンクに乗っているとは思っておらず、それだけにショックは大きかったのでしょう。立ち直るのには時間がかかりそうでした。
 サイコザクの宇宙への打ち上げは成功し、スパルタンは撃沈し、完全に連邦軍側の敗北で終わりました。ここからどのように挽回するのでしょう。次回からは宇宙編になるのかなと思いますが、ダリル達はまだ地球にいるので、ダリル達が宇宙に脱出するまでの物語になる可能性もありそうです。
 宇宙での戦いが最終章になりそうですが、アトラスガンダムが宇宙仕様になるのか、別のガンダムが登場するのか、今から楽しみです。