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マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン 「ドラゴンランス 魂の戦争」第1部「堕ちた太陽の竜<上>」

 マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマンの「ドラゴンランス 魂の戦争」は、ドラゴンランスシリーズの最も後の時代を描いた作品で、第1部~第3部の三部作で構成されています。ただし、第1部だけ上中下の三冊に分けられ、第2部及び第3部は一冊ずつという、やや偏った構成です。第1部の三冊は、後に一冊にまとめられたものが発売されていますが、近所の図書館にはなかったので、三分冊の上巻を借りました。
 「魂の戦争」は、「夏の炎の竜」で描かれた戦い(今作でこの戦いは<混沌戦争>と呼ばれています)から38年後の物語です。クリンから神々が去った後がどのような世界なのか。強大な敵を倒した後は平和な世界が訪れているのか。
 前作で主要な人物達が大勢死亡しており、更には38年も経過しているため、今作は登場人物がほぼ一新されています。ただし、エルフにはこの程度の年月はあまり関係なさそうですが。主に前作の子孫達が活躍するのだと思われます。
 それでは以下、マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン「ドラゴンランス 魂の戦争」第1部「堕ちた太陽の竜<上>」のあらすじを記載します。ネタバレ注意です。

 かつてはネラーカの都があった<死の谷>と呼ばれる場所を暗黒騎士の一部隊が進んでいます。分隊長のエルンスト・マギット、副隊長のミノタウロスのガルダー、及びその部下達の部隊です。暗黒騎士達は、かつてのタキシス騎士団、神々が去った後はネラーカ騎士団と称する騎士団のものでした。ガルダーは、かつては有能な戦士でしたが、戦いで右腕を失い、今では斥候に甘んじています。無能なマギット分隊長は、皆の反対を無視してこの場所での夜営を命じます。夜営の準備を始めたとき、見たこともないほどの巨大な嵐がやってきます。マギット分隊長は雷に打たれて死亡し、嵐は強まるばかりです。この嵐の中を、1人の人物が悠然とガルダー達の方へ歩いてきます。この人物は、丸坊主の若者で、よく見ると少女でした。少女はミーナと名乗り、騎士になるのが自分の使命だと話します。そしてミーナは、ガルダーの失われた右腕を元に戻す奇跡を行い、自分が<唯一神>に仕える者だと話します。ただしミーナは、<唯一神>の名前を口にする事はできません。ガルダー達はミーナ及び<唯一神>に忠誠を誓います。ミーナは、自分の愛馬フォックスファイアに乗り、ガルダー達へサンクションへ向かう事を命じます。現在のサンクションはソラムニア騎士団のもので、ネラーカ騎士団が町を抱囲している状態でした。
 大嵐は、<死の谷>だけでなく、アンサロン大陸全土に被害をもたらしました。シャルシー島にあるゴールドムーンの<光の砦>、エルフ達の住むクオリネスティ、赤竜マリストリクスのねぐら<マリスの峰>、緑竜ベリリンスラノクスのねぐら、青竜ケレンドロスのねぐら、エルフ達の住むシルヴァネスティ、等々。
 シルヴァネスティの近くにある古墳には、元シルヴァネスティ王女のアルハナ・スターブリーズが率いる軍が駐屯していました。シルヴァネスティは魔法のシールドを張って外部からの侵入を拒絶しており、アルハナの軍によるシールドを突破する試みは何度も失敗していました。アルハナの夫であるポルシオスは別行動を取っていましたが、連絡が途絶えて生死不明でした。アルハナ及びポルシオスの1人息子シルヴァノシェイは、アルハナと行動を共にしています。<混沌戦争>の直後に産まれたシルヴァノシェイは、30歳を超えていますが、エルフ社会ではまだまだ子供扱いされ、その事に不満を抱いています。大嵐に乗じて、アルハナ達が避難している古墳にオーガーの軍勢が近付いていました。これを察知したアルハナの副官サマールは、近く砦にいる<スティール軍団>に援軍を要請すること、及びその使者をシルヴァノシェイに任せることを決めます。これはシルヴァノシェイを安全な場所へ遠ざける目的もありました。アルハナ軍が劣勢の中、シルヴァノシェイは<スティール軍団>の砦を目指して出発します。しかし街道は大嵐で倒れた樹木で塞がれており、シルヴァノシェイは迂回を余儀なくされます。迂回したシルヴァノシェイが崖縁を通ったとき、近くの木に落雷し、その衝撃でシルヴァノシェイは崖から落ち、意識を失います。
 大嵐が過ぎ去り、ソレースの町では復旧作業が始まります。80歳を超えたキャラモンは町の大長老的な存在として人々の信頼を得ています。<憩いの我が家>亭は、キャラモンの娘のローラが切り盛りしています。もう1人の娘デズラは、冒険好きで各地を回り、珍しい酒を買い付けて来ることもありました。ティカは数ヶ月前に亡くなっており、それ以後のキャラモンはティカの後を追う日を待ち望んでいるようでした。<混沌戦争>の後、ソレースには<最後の英雄たちの墓>と呼ばれる建物が建てられました。この建物の警護は、ソレースに駐留するソラムニア騎士団の騎士達が行っています。その騎士の1人、ジェラード・ウス=モンダールは、若いけれど醜い顔の男で、家が金持ちで父親が大金を払って安全なソレースに息子を配属させた事もあり、他の騎士達から軽蔑されています。ジェラードは、<憩いの我が家>亭の常連でキャラモンと顔馴染みでした。ジェラードが墓の警護任務に就いていたとき、墓の中から人の声が聞こえてきます。施錠されているはずの建物の中から出てきたのは1人のケンダーで、タッスルホッフ・バーフットと名乗ります。タッスルホッフは英雄の1人として有名で、ジェラードはケンダーの悪戯だと思います。タッスルホッフは、キャラモンのお葬式で追悼演説するためにやってきたと話します。キャラモンは生きており、それを聞いたタッスルホッフは、またしくじったと嘆きますが、今日が葬式の前日だと知って、キャラモンの元へ急ぎます。不法侵入したケンダーに逃げられたジェラードは、その後を追います。タッスルホッフは、<憩いの我が家>亭でキャラモンに再会し、追悼演説を聞かせます。追悼演説によれば、タッスルホッフは時間を遡る装置でここへ来たようですが、タッスルホッフが語る内容はこの世界の歴史と合わない部分が含まれています。タッスルホッフとの再会を喜んだキャラモンは、散歩へ行くと言って<憩いの我が家>亭を出た所で心臓を押さえて倒れ、階段から落下します。急いでキャラモンの元へ駆け付けたジェラードに、キャラモンはタッスルホッフをダラマールのところへ連れて行く事を頼み、ジェラードはこれを引き受けます。そしてキャラモンは、息を引き取ります。
 シルヴァノシェイは、崖下で意識を取り戻しますが、左腕を骨折していました。谷は木々が枯れて灰色の塵が積もる不毛の地でした。応急処置をしたシルヴァノシェイは、何とか崖を登って元の街道へ戻ろうとしますが、どうしても戻る事が出来ません。シルヴァノシェイは、自分がシルヴァネスティを囲むシールドの内側に入り込み、外に出れなくなっているのだと気付きます。絶望したシルヴァノシェイが母アルハナの名前を呟いたとき、近くに隠れていた3人のエルフが姿を見せます。エルフ達はシルヴァネスティのキラースという組織の者で、隊長ローランはシールドを抜けて外へ出る方法はないと話します。ローランは、シールドの内側では多くの者が衰弱の病で死んでいるけれど、<氏族長会議>はシールドを解こうとせず、人々も外界の脅威を恐れてシールドの存在を受け入れています。ポルシオス及びアルハナに会った事があるローランは、父母の面影のあるシルヴァノシェイが王子である事を信じ、シルヴァネスティを救うためにシルヴァノシェイが遣わされたのだたと考えます。ローランは、シルヴァネスティの首都シルヴァノストへ向かい王位継承権を主張するようシルヴァノシェイに提案します。シルヴァノシェイは、もう母はこの世にいないだろうと考え、母がシルヴァノシェイがシルヴァネスティの王座について過去の過ちを正すことを望んでいた事を思い出し、ローラン達と共にシルヴァノストへ向かう決心をします。
 ミーナを先頭に暗黒騎士達はサンクションへ向かっていました。途中で休息を取ったとき、ミーナはガルダーに武器の使い方を教えて欲しいと頼みます。ガルダーは、戦った事がないという事実に驚きながらも、モーニングスターと呼ばれる戦槌の使い方をミーナに教えます。ミーナは、すぐにガルダーと渡り合えるほどに上達します。戦闘訓練を終えたミーナは、再び暗黒騎士達を率いて出発します。
 キャラモンの葬儀が行われ、タッスルホッフは追悼演説を行います。タッスルホッフは、以前に追悼演説をし損ねたキャラモンの葬儀と、今回の葬儀とで様子が異なる事を不思議に思います。タッスルホッフが時間航行装置を使ってキャラモンの葬式に参加するのは二度目であり、一度目は遅刻して追悼演説ができませんでした。一度目の葬式では、世界は平和で、パリンや、ダラマールや、ゴールドムーン等々の昔の仲間達が大勢参加していましたが、二度目の葬式には誰も参加していませんでした。
 葬儀の後、ジェラードはタッスルホッフを連れて騎士団の駐屯地を訪れ、<盾騎士団長>のウォーレン卿に面会を求めます。ジェラードは、タッスルホッフをダラマールの元へ連れて行く事をキャラモンに頼まれたとウォーレン卿に相談します。騎士団の<典範>によれば、末期の願いは叶えるべしとあり、ウォーレン卿はジェラードがキャラモンの願いを叶える事に賛成します。しかしダラマールは行方不明でした。協議の結果、クォリネスティにいる魔法使いパリン・マジョーレに相談する事になります。しかしクォリネスティはネラーカ騎士団の支配下にあり、大部隊での移動は難しいため、ジェラード及びタッスルホッフの2人だけでクォリネスティへ向かう事になります。
 サンクションは、過去にタキシス騎士団が占有していましたが、<混沌戦争>後は有毒な噴煙で人が住めない場所となりました。ホーガン・バイトという謎の魔術師が大気を清めて人が住める場所に戻し、サンクションを立派な都市に成長させました。現在は、サンクションを狙うネラーカ騎士団が街を包囲し、ソラムニア騎士団が街の防衛に当たっています。ネラーカ騎士団は、サンクションの東にあるザカール谷に兵を集結させており、一大決戦が行われようとしています。ミーナが率いる騎士団は、決戦前にザカール谷に到着します。サンクションからは船でソラムニア騎士団が撤退していっており、ネラーカ騎士団は戦う前から勝利を確信しています。ミーナは、ネラーカ騎士団が雇った傭兵隊のサミュヴァル隊長を説得して傭兵隊を仲間に付けます。そしてネラーカ騎士団によるサンクションへの進軍が開始されますが、ミーナは配下達に待機を命じます。ネラーカ騎士団がサンクションへ近付くと、撤退したはずのソラムニア騎士団がサンクションから出撃してきます。これはソラムニア騎士団の罠で、撤退したように見せかけて攻撃のチャンスを待っていました。ネラーカ騎士団は混乱して敗走し、ソラムニア騎士団がそれを追い立ててネラーカ騎士団の騎士達を次々と倒していきます。後方で仲間達を待機させていたミーナは、サミュヴァルの傭兵隊に敗走する味方へ矢を放たせて敗走を止め、兵をまとめて反撃に転じます。ミーナを筆頭にネラーカ騎士団はソラムニア騎士団を押し返し、ソラムニア騎士団はサンクションへ撤退します。ネラーカ騎士団の騎士達はミーナの名を呼び、ミーナを支持します。サンクション攻略の指揮官であるミルズ卿及びその配下の騎士達は、その様子に怒りの視線を向けていました。
 シルヴァネスティは、コナル将軍が実権を握って軍政を敷いていました。魔法のシールドで覆われたシルヴァネスティでは、住民の半数近くが衰弱病で死亡していましたが、シールドを維持する方針でした。コナル将軍に逆らうものは、姿を消すのみでした。シルヴァノシェイが出会った3人のエルフのうち、ローランはシルヴァノシェイがアルハナの子供だと信じていましたが、残る2人は信用しておらず、<真視>の魔法で真偽を確かめる事を要求します。シルヴァノシェイはこの要求を受け、自分が本物である事を証明します。こうして残る2人もシルヴァノシェイに忠誠を誓います。シルヴァノシェイは、王位継承者として堂々とシルヴァノストへ入り、王位を得る事を計画します。シルヴァノストは、自分の計画が大丈夫だと信じて疑いませんでした。
 朝早くに起こされたタッスルホッフは、ジェラードにより手枷をはめられて、連れ出されます。ジェラードは、囚人の護送という名目でソレースを出ます。馬でソレースを離れてしばらくして、ジェラードが羽織っていたマントを脱ぐと、ジェラードは暗黒騎士の鎧を着ていました。ネラーカ騎士団が占領しているクォリネスティに入るための変装でした。初めは冒険をワクワクしていたタッスルホッフですが、ジェラードはタッスルホッフの話しを無視し続け、退屈し始めていました。
 <混沌戦争>の後にタキシス騎士団は<髑髏騎士>ミリエル・アブリーナが仕切っていましたが、<夜卿>モーラム・タルゴンヌがアブリーナを暗殺して実権を握りました。タルゴンヌは、騎士団をネラーカ騎士団へと改名し、ネラーカの北にあるジェレクに騎士団本部を置きました。タルゴンヌは、戦いには全く向かない人物でしたが、財力と心理操作力に優れた人物でした。サンクション攻略の司令官ミルズ卿の副官ロデリックがジェレクを訪れて、戦況をタルゴンヌに報告します。ロデリックは、ソラムニア騎士団の策略を破ってネラーカ騎士団が勝利し、ある下士官の反逆がなければサンクションを奪回できたと言い、その下士官ミーナが騎士達の人気を集めていると報告します。タルゴンヌは、この報告が嘘である事を見抜いており、ミーナをどのように扱うかを思案します。タルゴンヌは、巨竜マリストリクスから要請されていたシルヴァネスティ攻撃の任務をミーナ及び彼女を支持する騎士達に与える事を決めます。またタルゴンヌは、別の指揮官にサンクション攻略の指揮を引き継がせ、ミルズ卿は巨竜マリストリクスにサンクション攻略戦の報告をしに行くよう命じます。

 以上が、「ドラゴンランス 魂の戦争」第1部「堕ちた太陽の竜<上>」の物語です。
 前作から38年が経過している事もあり、これまでのキャラクタは死んでいるか、会話の中に名前が登場するくらいでした。その分、新たなキャラクタが沢山登場し、新時代の幕開けを印象づけています。特に、ミーナが目立っていました。彼女が何者なのか、彼女が信仰する<唯一神>とは何なのか、とても気になる謎です。今後はシルヴァネスティへ向かいそうで、シルヴァノシェイとの絡みに期待できそうです。
 旧キャラクタの中で、タッスルホッフだけは今作でも活躍しそうな気配を見せています。これは予想外でした。嬉しいような、嬉しくないような、微妙な気分です。おそらくは、作者のお気に入りキャラクタなのでしょうね。でも、時間を飛び越えて登場しており、歴史が異なる並行世界からやってきている節もあり、何だか少しややこしい存在になりそう。ファンタジーに時間移動とか並行世界とか入れると収集つかなくなりそうで、あまりこの設定は好きではありません。
 初期のキャラクタの中で今後登場しそうなのは誰でしょう?エルフのローラナはピンピンしているでしょうから登場してもおかしくはないですね。タッスルホッフ及びジェラードがクォリネスティへ向かっていることから、早目に登場するかもしれません。ゴールドムーンは人間なのでかなり年老いているはずですが、まだ生きているようです。リヴァーウインドは死んでいるようですが。レイストリンは、生きているのか死んでいるのかよく分かりませんが、登場してもおかしくはない、いえ登場して欲しいですね。
 今巻は、新しい登場人物の紹介と現在の世界状況の説明という感じで、まだまだ物語の発端です。今後、どのような事件が起こって、どのように完結するのか全く予想がつきません。ネラーカ騎士団を倒すのか、ドラゴンを倒すのか、それともラスボス的な存在が今後の物語で登場するのか。<唯一神>とやらがラスボスになる可能性も?
 早速、続きを読もうと思っています。




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